対話するマスコミ2
先週のObserver紙で、コラムニストのJasper Gerardが、前の週の自身のコラムの内容について謝罪した。
謝罪することになったのは「Frankly, doctor, your bedside manner stinks(はっきり言って、先生、あなたのベッドサイドのマナーは最低です)」と題したコラム。この中で、Gerard氏は、BBCのQuestion Timeでの、ある研修医の言動についてとりあげた。
Question Timeというのは、毎回政治家や活動家などをパネルに迎え、事前に受けつけた質問や会場からの質問にパネリストが答える形の討論番組である。
この日は保健相のPatricia Hewittが出演しており、研修医の選考を巡るごたごたについての質問が彼女に集中していた。
MTAS問題は保健相の責任問題、ひいては引責辞任に値しないのかと質問に対し、Hewittが、これは辞任するような問題ではないと返答している最中のことである。(英語がわからなくても、何が起こっているのかは一目瞭然です。年配の男性が司会のDavid Dimblebie、女性が保健相のPatricia Hewitt、若い男性が研修医Dr Phil Smithです。)
Dr SmithがHewittにむかって「自分も含め、研修医たちは怒っている。(中略)Patricia、今すぐ辞任すべきだ!」と叫んだのである。
コラムニストのGerard氏は、この発言を礼儀知らずと切って捨て、Dr Smithの医師としての資質を疑う人格攻撃のようなコメントをした。その上、MTASに対する研修医たちの抵抗を、研修医の雇用問題に単純化し、「医学教育を受けたからといって希望するポストへの雇用が保証されると勘違いしている」研修医を批判した。
Observer紙のコラムニストが、TVに映ったほんの数分の姿だけを元にして、追加取材もなく、一個人の職業人としての資質に対するコメントを、数十万人の読者が目にするコラムに書くというお粗末さは言語道断だが、MTAS問題を、背景を知ることなく、単に雇用問題にすり替えるのも、大問題である。
当然のことながら、このコラムにはたくさんコメントがついた。ほとんどが、Gerard氏の記事に対する反論であった。中には感情的なものやGerard氏の人格攻撃になってしまっているコメントもあったが、ほとんどは、きちんと反論しているコメントであった。
そして次の週、Gerard氏は自身のコラムの中で、MTASによる選考の不公平さ、問題の大きさをきちんと把握することなく記事を書いたことに対し、謝罪した。彼は、記事にコメントをつけた人たちとのメールによるやりとりにより、問題への理解が深まり、自分の意思で自分の過ちを認めて謝罪する(編集者や弁護士に勧められたからではなく!)と書いている。
対話する場はある。わかりあえることもある。そして、そのことを報告する場も、ちゃんとある。
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