Saturday, June 30, 2007

My Avatar @ Springfield

 The Simpsons Movieのサイトで作ってみました。

 しばらく眺めていると、ちゃんと自分のように見えてくるのが不思議です。

The Simpsons TM and © 2007 Twentieth Century Fox Corporation

Sunday, June 24, 2007

Feminisation - 2

 女性医師の増加と、より柔軟な勤務制度を望む医師の増加は、医師の労働力・人件費の予測を困難にする。

 まず、現在の制度を維持するために必要とされる医師数の予測である。医療サービスを維持するために必要な医師の総労働時間数が決まったとしても、フル・タイムとパート・タイムの医師数の割合によって、必要な医師の実数が大きく変わる。

 次に、Flexible Training Schemeを利用する医師が増えれば、研修医が研修を終えるまでにかかる時間が長くなる。研修を終えるまでの期間は、研修医それぞれの事情によって異なり、ばらつきも多くなる。

 Job Shareといって、ひとつの研修ポストを2人の医師で半分ずつ埋めたり、パート・タイムで減った時間の分だけを担当するlocumを期間限定で雇用したりする。いずれの方法をとっても、FTSを機能させるためには、フル・タイムで研修ポストを埋める場合よりも多くの人件費が必要になる。

 また、研修を終え、コンサルタントになる資格ができても、家庭生活を優先させるためにパート・タイムのコンサルタントとして働くことや、locumで働くことを選択する医師が増えることも十分考えられる。

 さらに、キャリア・ブレイクをとった場合、再研修・再教育の時間を考えなければならない。これも、個人差が大きいため、単純に予測することはできないであろう。

 いずれにしても、feminisationがここまで進んだ以上、逆戻りすることはないだろう。女性医師がmajorityになったのだから、ばらつきがあるのが当然という条件の中で、どのようにmedical workforceを維持していくのかを考える時がきている。

 日本でも、イギリス並みのレベルに達するかどうかはともかくとしても、feminisationが進みつつある。おまけに、若い医師の仕事に対する意識は、男女を問わず、古い世代のものとは異なる。医師労働力について「真剣に」検討しないと、大変なことになるのは目に見えていると思うのだが。

Saturday, June 23, 2007

Feminisation - 1

 最新のBMAの調査によると、2006年にイギリスの医学部を卒業して研修を始めた医師の58%が女性であるという。medical workforceのfeminisationである。1995年の調査ですでに男女がほぼ同数になっていたようだが、その後の10年間で、女性の割合がさらに7%も増加したことになる。

 数の変化もそうだが、注目すべきは、work-life balanceがより重要視されるようになってきていることであろう。この傾向は、女性医師だけでなく、男性医師にも見られる。

 女性医師の5人に1人が、キャリアの大部分をパートタイムで働きたいと答えたという。これは、男性医師の5倍にのぼる。また、約半数の女性医師が、キャリアの一部分を、パートタイムで働きたいと考えている。これは男性医師の15%の3倍超である。

 それ以外にも、キャリアの途中で数年間仕事から離れたい(キャリア・ブレイクをとる)と考えている医師も男女ともに結構な数にのぼる(女性80%、男性50%)。

 現行の研修制度には、Flexible Training Schemeという制度がある。研修中の勤務時間を半分を限度として減らすかわりに、研修年数をその分延長する制度である(50%のパート・タイムで研修した場合、研修年数はフル・タイムの2倍になる)。この期間、フル・タイムの医師と同じ頻度でオン・コールにつく必要がある。健康上の理由でフル・タイムで働けない人、や介護の必要な家族がいる人、子育てに時間を割きたい人などが、この制度を利用している。大部分が女性医師である。

 MTAS/MMCの新しい研修制度は、しかし、柔軟な研修制度がしづらい仕組みになっているらしい。Flexible Training Schemeのパート・タイム研修医をどのように制度に組み入れるのか、あまり検討されていないようである。

 コンサルタントのレベルになると、パート・タイムとして働くことは珍しくない。お隣のクロイドン区では、コンサルタントの半数以上が女性で、多くがパート・タイムで働いている。

 私の働いているランベス区では、約30人のコンサルタントのうち、女性は4人しかおらず、全員がフル・タイムで働いている。(ひじょうにリベラルな地区にもかかわらず、女性医師が少ない理由は、まったくの謎である。)唯一、週3日のパート・タイムで働いているのは、体の一部に運動障害がある男性医師である。

Tuesday, June 19, 2007

若手医師のキャリア選択

 昨日、しばらく棚上げにしようと書いておきながら、MTAS/MMCの呪縛からなかなか抜けられない私である。しかし、今日は少し切り口を変えて、医師の新しい(医学以外での)キャリア(alternative careers)についてである。

 日本でも、最近の医療を巡る大変な状況で、医者が自分の子どもは医者の道を進ませたくないと思っているとか、医学生が医師以外のキャリアを模索しているといった話を時折目にするようになった。

 医師になる以外のキャリア選択は、決して新しいことではない。私が学生の頃も、厚生省の官僚になるとか、外務省の医官になるといった道が、少ないながらも存在した。ここに来て目新しいのは、まったく医学から離れた職を得るという選択肢が入ってきたということなのだろう。

 さて、昨今のMTAS騒動で、8月から失業の危機にある研修医たちが、NHSでの研修以外のキャリアとして、まず目を付けたのは、国外で研修を続けるという選択肢であった。オーストラリアやニュージーランド、カナダなどが人気である。イギリスでは、医学生の間に国外で実習することがカリキュラムの一部である上、旧植民地の国との医療資格の互換性もあるため、医師が人生の一時期、外国で仕事をするという選択肢をとるということは、珍しくない。

 その後も混乱が続き、医師としての将来への展望がまったく見えない中で、研修医たちの間には、医師という職業にしがみつく必要はないという論調が急速に広がってきた。

 そんなところへ、医師のalternative careersに関するカンファレンスが告知された。今週の金曜日、ロンドンで開催される。

 医師のalternative careersとしては、軍医、ボランディア組織の医療サポート、旅行医学などの医師としての役割を生かすものから、製薬会社、医科学分野などの医学類縁の仕事、さらには、金融・経営やマネジメントなど、まったく異なる分野の仕事まで、さまざまなようである。

 うちのスタッフ・グレートのAが、参加したいが仕事を休んでもいいかと聞いてきたので、私は、自分自身が興味のあることでもあり、喜んで送り出すことにした。彼の報告を聞くのが楽しみである。

 医師のキャリアの議論で、国民の税金で医学教育を受けさせてもらいながら、医療に貢献しないとはけしからんというお説教は、日本でもイギリスでも目にする。日本を離れて働いている私も、広い意味では、日本で医療にたずさわるというまっとうな道から外れたキャリアを選んだことになる。だからというわけではないが、そういったお説教には、同調できない。職業選択の自由はもちろんのことだが、医学教育で得た恩恵を社会に還元するのは、医者になるだけでなく、もっと他の方法もあっていいのではないかと考えるからである。

Sunday, June 17, 2007

心がつぶれるような

 MTAS/MMCに関して、2回続けて暗い内容のエントリーを書いたら、母が心配して、メールを送ってきた。そんなに落ち込んでいるように見えたのだろうか。

 確かに、このところ、気分はずっと低空飛行である。MTAS/MMCの問題と同時に、うちのNHSトラストのサービス削減計画(3年間かけて800万ポンド-約20億円、予算の5%以上-の削減)も進行中であるため、明るい話題はまったくない。

 前々回のエントリーを書いたあと、暗い話題に引きずられて、私自身が気分転換できなくなっており、悪循環におちいっていることに気づいた。MTAS/MMCの話題はしばらく棚上げにしたほうがよさそうだが、その前に2つだけ、関連した記事を紹介する。

 ひとつは、ジャーナリストのAngela PhillipsがGuardian紙に書いた「We need a national outcry(国をあげて声を上げるべきだ)」と題したブログ。彼女の姪のJacquieの体験が紹介されている。

 Jacquieは、ロンドンで働く精神科の研修医で、2歳の子どもがいる。Lodon/KSS(ロンドン、ケント州、サリー州、サセックス州を含む研修ローテーション単位)の期間限定のポストをオファーされたが、受けることができない。ぎりぎりまで研修先を知らされないため、仕事と家庭・子育てとを両立できるかわからないからである。また、この期間限定のポストは、期間修了後の進路の保証がなく、彼女が研修を最後まで修了できるかも、まったくわからない。

 もうひとつは、5月のBBC Question Timeで、客席から保健相Patricia Hewittに向けて「今すぐ辞めるべきだ」と叫んだDr Philip Smithの手記である。これは、Doctors.net.ukという、医師専用のサイトに投稿されたものを、本人の了承を得て、ある医師が自身のブログに転載した。

 彼は、Guardian紙のに、全国紙上でジャーナリストから人格攻撃された時も、沈黙を守った。(ジャーナリストは後に、批判を受け、謝罪した。)しかし、MTASの結果が発表され、初めて沈黙を破った。

 手記の中で、彼は、自分は運よく第1希望のポストを得たが、だからといって、気分が晴れるわけではないと書いている。むしろ、その逆である。ポストはあるものの、どこの病院で研修するのか、ぎりぎりまでわからない。その上、まわりには、優秀な研修医ながら、理不尽にもポストを得られなかった友人たちが多くいる。

 個人の体験は、新聞の一般報道記事とは別の切り口から、問題の深さ、悲惨さを炙り出す。心がつぶれるような思いである。

Saturday, June 16, 2007

口述録音

 専属の秘書さんが来てくれるようになってから、ほとんどの書類仕事を、口述録音でするようになった。

 いまだに、アナログの大きな口述録音用の機械(dictaphone)を使っている。臨床の仕事を初めてまもなくの頃、eBayを通して買ったものである。うちのNHSトラストでは、テープおこしをする機械がみな、Philips製のテープ(minicasette)仕様である。minicasetteは普通の小さなテープ(microcasette)より大きいので、他のメーカーの機械が使えないのだ。

 専属の秘書がいなかった時期は、簡単な手紙などは自分でタイプしていた。タイピングの技術だけなら、私は十分秘書としてやっていけるくらいの腕があるので、別に苦痛ではなかった。

 しかし、自分でタイプすると、ついつい文法やスタイルなどの細かいところにこだわってしまい、単なる報告の手紙でも、時間がかかるのが難であった。

 口述録音では、いったん口述してしまうと、次に目にするものはすでに全部がタイプされてしまっているので、多少「文学的」に気に入らなくても、筋さえ通っていれば、まあいいかと思える。そんなわけで、文章をいじり回す時間が減り、仕事の効率が上がった。

 初めて口述録音したのは、今から2年前、臨床の仕事を初めて3ヶ月目に、地域精神保健サービスのチームに移った時である。外来が週に3-4コマあり、毎週かなりの数の手紙を書かなくてはいけなかった。

 始める前は、ただ話すだけで、それを他の人がタイプしてきちんとした手紙に仕上げてくれるなんて、楽でいいと思っていた。しかし、実際やってみると、これが、全然簡単ではなかった。

 私は、日本語でも英語でも、ものを書く時は、大まかな構成を決めた後は、頭に浮かぶ順に書いていき、あとから文章を組み直すというスタイルをとっている。だから、Dear Dr Xxxで始まって、Yours sincerelyで終わる手紙を、流れにそって口述するというのは、まったく自然ではない。

 その上、英語がそんなに流暢に話せないので、話すより書くほうがずっと楽である。文法や構文に自信はないし、複雑なことを言おうとすると、途中で頭がこんがらがってしまう。

 初めの数ヶ月間は、前任者たちの手紙を参考にしながら基本のフォーマットを覚え、下書きをして、それを読むように口述していた。これなら自分でタイプしても手間はかわらないのだが、「ここで練習しなければ一生できるようにならない!」と、ひたすら繰り返し、なんとか下書きしなくても口述できるようになった。

 慣れてからも、なにこれ?と理解に苦しむようなおかしな文章が並んでいる手紙が返ってくることが、時々ある。自分で口述したに違いないのだが、つじつまがあっていなかったり、前後の文章と脈絡がなかったりする。同僚たちに聞くと、native speakerであっても、頭が「口述録音モード」になっていないと、あとからタイプされたものを見て首を傾げるようなことがあるらしい。

 口述録音・タイピングのシステムを維持するには、書類仕事の量にもよるが、2-3人のコンサルタントに対して医療秘書1人分を配置しなくてはならず、人件費がかかる。経費削減のおり、テープおこしの業務を外注も珍しくない。コンサルタントは、デジタルの口述録音マシンを支給され、口述したものを音声ファイルで保存する。このファイルはインドに送られ、2日後にはタイプされて戻ってくるというわけである。お隣のトラストでは、外注によって、かなりの数の秘書が解雇されたと聞く。

 音声自動認識システムがもっと改良されたら、外注業務すらなくなるのだろうか。私の口述録音は、おそらく、コンピュータは書きおこせないと思うけれど。

Thursday, June 14, 2007

Demoralising

 MTASの悲劇が次々に目に見えるものになっている。

 私のいるNHSトラストの約半数の研修医たちが、ポストのオファーをまったくもらえなかった。その多くが、放心状態で仕事にも手がつかず、これからどうしたものか、途方に暮れていると聞く。(当然である。8月からは失業者である。)

 昨日のコンサルタントの集まりでは、私たちに何ができるのか話し合った。しかし、いくら話し合っても、結局、研修医たちを精神的にサポートする以外、何もできないらしいということがわかるだけであった。コンサルタントたちもみな、怒り、呆れ、無力感を感じている。

 「demoralising」というのは、こういう感情であるのだと、初めて実感している。

 demoralisingは、日本語では「士気の低下」と訳されることが多い。しかし、単にやる気や覇気がなくなるというよりも、これまで信じていたものが基盤を失い崩れ落ち、希望を失い、なんとか自分を奮い立たせようとすら思えなくなる、そんな感情である。

 サッチャー時代からブレア政権初期にかけての、イギリスの医師たちのdemoralisingについて、これまでにもよく耳にした。NHSのサービスがなかなか向上しない原因のひとつとして、スタッフがいったんdemoralisingを感じると回復に時間がかかるためだといわれる。

 これまで、demoralisingがなぜ回復できないのか、いまひとつ理解できなかったのだが、今回ようやくわかった気がする。イギリスの医療研修・診療がほぼNHSの独占状態にあり、医師という職業を選び、イギリスで働く以上、NHSから逃れることができないためである。日本の勤務医の「逃散」のようなことは、制度として起こり得ないのだ。

 ブレア率いるNew Labourになる以前は、医師のdemoralisingの理由は主に、医療費の不足、人員や医療資源の不足によるものであった。New Labourになってからは、NHSの意思決定が中央政府にどんどん移行され、医師の自治権、決定権がどんどん失われていくことにより、医師はdemoralisingを感じている。

 MMC/MTASは、そのいい例である。以前は、地域の研修ローテーション単位で、各王立学会の指針に基づき、地域の需要に添って研修医を選考していた。しかし、MMC/MTASでは、政府が主導して作った選考基準で、中央で一括して研修医を選考しようとした。MTASのシステム自体は失敗に終わり、お蔵入りになることがすでに決まっているが、選考そのものをを止めることはできなかった。選考の一部は旧来の方法に戻されたが、信頼できないシステムに半分乗ったまま、コンサルタントたちが研修医を選ばざるを得ないというねじれた状況に陥り、悲惨な結果が出た。しかし、結果が結果として出てしまった以上、これまでの過程を巻き戻すことができない。

 このdemoralisingが研修制度がらみで生じているということは、これまでの問題にもまして、NHSの将来に大きく影響すると思う。イギリスの医療制度はずっと悪評が多かったが、研修制度はそれなりに機能していた。劣悪な労働条件の中、これを乗り切れば一人前の医師になれるという希望があったため、研修医たちはNHSの労働力として働くことを受け入れてきた。

 しかし、今回、数世代にわたる研修医の多くが、研修を続けるという希望そのものを打ち砕かれた。彼らに実力がなかったからではなく、政府の政策が穴だらけだったために。医学部の定員数を大幅に増やし、外国からの研修医を労働力として多数受け入れ、新しい選考制度を拙速に導入し、そして、いきなり研修医の定数を絞ったのだ。

 3万人の将来を担う若い医師たちは、おそらくこの半年間の悪夢をずっと忘れないだろう。現在NHSを支えているコンサルタントたちも、demoralisingの感情を引きずると思う。(少なくとも私は、なかなか回復できそうにない。)NHSは、demoralisedな医師の集団によって、今後数十年間も持ちこたえられるほどの体力などないと思う。

 これから誰がNHSを支えていくのだろうか。数値目標達成しか頭にない官僚と政治家しか残らないと思うけれど。

Saturday, June 09, 2007

MTASラウンド1の結果

 今年8月からの研修制度の選考のラウンド1の結果が出た。ポストのオファーをもらった研修医は、48時間以内にオファーを受けるか受けないか返答しなければならない。オファーを蹴る研修医が出て空いたポストには、補欠リストの上から順に割り振られていき、6月22日までに、ラウンド1の全ポストが埋まることになっている。

 私の働いているSLaMには、4つの異なる研修ローテーションに所属する研修医が、合わせて100人近くいる。そのうち、なんと、10人しかロンドンの研修ポストのオファーを受けられなかった。

 SLaMは、Maudsley病院とBethlem Royal病院を抱える、イギリスで一番大きな精神保健専門のNHSトラストである。世界でも有数の業績を誇る精神保健研究所とのつながりが強いため、上昇志向の強い研修医があちこちから集まってくる。今現在、SLaMで研修している研修医たちは、すでに厳しい選考を勝ち抜いてきたのである。そんな研修医たちのわずか10%しか、彼らがすでに勝ち得た研修ポストのオファーをとれなかったのである。

 いま、私が一緒に仕事をしているスタッフ・グレードの医師Aは、以前のスタッフ・グレードのHが産休のカバーをしてくれている。Aは医学部卒業後、約6年のキャリアがあり、数ヶ月前、中期研修を終えた。同僚からの信頼は厚い、優秀な医師である。Royal CollegeのMembershipの試験も一発でパスし、いくつかの論文も発表しており、経歴としては申し分がない。今回の選考では、ラウンド1aで、応募した4つのポスト全部(うち2つがロンドンのポスト)で1次選考を通った。ロンドンの1次の合格率が18%だったことを考えると、これはすごいことである。

 しかし、ロンドンのポストのオファーは来なかった。オファーがあった人と比べても経歴に劣るところはまったくなく、面接もうまくいったのに、なぜポストがとれなかったのか。彼は深く落ち込むとともに、ぶつけようのない怒りを感じている。

 このような例は、彼だけではない。Remedy UKのサイトでは、ラウンド1でオファーが来なかった人たちに、経歴を書き込むように呼びかけている(No Jobs in Round 1?)。これを見ると、なぜこの人にオファーが来なかったのかと思うような経歴が、ずらりと並ぶ。医学部を優秀な成績で卒業。国際学会での口頭発表に論文発表、臨床調査(audit)に医学教育、医学関係の修士号・博士号の取得、などなど。

 6月下旬からラウンド2が始まるが、研修ポストがどれだけ残っているのか、いまひとつはっきりしない。つまり、ラウンド1でポストをとれなかったということは、研修を続ける可能性がかぎりなく少なくなったことを意味する。

 オファーが来なかった医師たちは、この週末をどのような気分で過ごしているのだろうか。Remedy UKのフォーラムを見ると、8月から無職になる可能性をふまえて、今週末に、ローンを返済中の家を売りに出すという人が、少なからずいる。また、オーストラリアで研修を続けることや、医師以外のキャリアを模索する人たちもいる。

 運よくオファーをもらった人たちも、複雑な心境でいる。安堵したとはいっても、まわりを見渡せば、オファーをもらった人ともらわない人の能力の差がはっきりせず、素直に喜べないと思う。

 1万人を超える若い医師たちが苦悩し、裏切られたと感じ、傷ついている。イギリスの医療の将来を背負って立つ若い医師たちの記憶に、この傷はずっと残るに違いない。

 この負の遺産に8月以降、もっとも影響を受けるのは、言うまでもなく、患者たちである。

 最初の問題は、8月1日に起こると予想されている。ラウンド2は当初、7月いっぱいで終わり、8月1日にはすべての研修ポストが埋まっている予定であった。しかし、相次ぐシステムの変更で、これが10月下旬までずれこむことになる。研修医たちが8月1日に一斉に移動し、あちこちで研修医が足りずに、NHSのサービスがパンクする可能性がある。

 しかし、それよりも大変なのは、長期的なつけであろう。数年にまたがる世代の研修医の士気を、一気に下げてしまったのだから。一番の責任を負うべき政府と保健省は、今後、彼らの信頼をとり戻すことができるのだろうか。(とり戻そうという気があるのかどうか、疑わしいところであるが。)

Wednesday, June 06, 2007

ロンドン・オリンピックのロゴ

 昨日、2012年のロンドン・オリンピックの公式ロゴが発表された。オリンピックもパラリンピックも同じロゴで、競技や場面によって、さまざまな色の組み合わせのロゴを使うそうである。(TM London 2012 Olympic and Paralympic Games )

 発表会では、オリンピック委員会の委員長のセバスチャン・コーはじめ、お偉方たちが、「(ロゴは)斬新で、オリンピック精神を象徴し、ブランドに敏感な若者たちにアピールする」と、手放しで賞賛した。

 これを見た時の私の第一印象は「へ?」だった。まったくアピールを感じないのは、私がもう若くないせいなのかしら。

 こんな風に思ったのは私だけではないらしく、発表直後からあちこちで非難轟々で、すぐに「オリンピック・ロゴを変更するための請願」のページがネット上で立ち上がり、かわりのロゴ・デザインが投稿され始めた。たとえばこのようなロゴ(copyright James Wren)。

 また、オフィシャル・ロゴを組み替えて茶化している人たちもいる。個人的には、これがお気に入りである(sorry!)(copyright Clive Davis)。

 ロゴを含めたロンドン・オリンピックのブランド作成は、Wolff Orinという大手のブランド・コンサルタント会社が請け負った。その費用は40万ポンド(約1億円!)だという。セバスチャン・コーが直々にこの会社を指名したらしい。ちなみにこの会社、携帯電話のOrangeのマーケティングを担当している。個人的には、Orangeのロゴは好きである。

 ロゴの悪評にさらに追い討ちをかけるように、発表会の際に使われた動画に使われていた点滅光で、これまでに少なくとも18人がてんかん発作を起こしたそうである。ポケモン発作のようなものである。委員会はすぐに、オフィシャル・ページの動画を中止した。委員会側は、発作の原因はロゴそのものではなく動画であると、防戦に必死である。確かにそうなのだが、Ofcom(Office of Communication)が調査に乗り出したそうで、オリンピック委員会側はあまり分が良くない。

 Bookies(賭け会社)はさっそく、オフィシャル・ロゴが取り消されるかを対象にした賭けを始めたという。

 評判の善し悪しはともかくとして、みんなが話題にしているという意味では、ブランドとしての宣伝効果はものすごいと言えないこともない。