Tuesday, September 12, 2006

Lunar Houseのお得意さん−Legal Alienの由来

 9月1日金曜日、クロイドンにある内務省のPublic Enquiry Office(通称Lunar House)に行って、滞在許可を延長した(Further Leave to Remain)。

 去年、研究職から臨床職へと仕事をかわったことと、今年の4月に内務省が永住権の申請条件を変更したため、この1年半弱の間に、これが3回目のLunar House詣でであった。

 申請条件が変わっていなければ、今回の更新時に、無期限滞在許可(通称永住権、Indefinite Leave to Remain)を申請する予定だった。余談だが、このルール変更、告知期間も短く、あまりに突然であり、移行措置期間もなかったため、私は腹が立ってたまらず、自宅と職場それぞれの地区選出の国会議員にメールを送り、不公平だと訴えた。どちらの議員からも、金字でHouse of Commonsとエンボスで印字された封筒に入った返事が来た上、政府の移民担当官からの返事も来た。後者の内容はあまりに杓子定規かつ的外れで、噴飯ものではあったけれど。

 さて、話を戻す。滞在許可の申請は、郵送でももちろん可能である。しかし、今回に限らず、私の滞在許可の更新の時期は、必ず前後に学会や一時帰国等で国外に出る予定が入っており、何ヶ月かかるか予測できない郵送申請はなかなかしずらく、Lunar Houseでの直接申請に頼らざるを得なかった。

 この直接申請、プレミアム料金で、1回あたり500ポンドかかる。そのかわり、申請当日に滞在許可を発行してもらえる。郵送申請の通常料金が335ポンドなので、手元にパスポートがない状態で3-4ヶ月待つことを考えれば、差額の165ポンドも許容範囲だと思う。そうはいっても、1年半の間に国に1500ポンドも払ったことを思うと、ため息が出るが。

 2000年の4月にAcademic Visitorとして初めて英国に来た時は、空港の入国審査カウンターで書類を見せて、滞在許可を出してもらった。パスポートにスタンプが押され、手書きで許可期限の日付を書き込むだけで、費用はかからなかった。

 それから6年。難民申請者や不法滞在者の増加と、その対策にかかる費用捻出のため、滞在許可やエントリー・クリアランスの審査に申請料がかかるようになった。(おまけに、申請料導入後1年も立たないうちに値上がりした。)また、許可証も、単なるスタンプから、偽造防止加工された、顔写真入りシールに変わった。

 世界情勢の変化に合わせ、EU新規加盟国からの移民が増えたことにより、EU以外の国からの移民に対する入国審査基準は、どんどん厳しくなっている。

 私は入国後、今回が5回目の更新であった。2002年の3回目の更新と、去年の4回目の更新は、どちらもすべり込みで労働許可証や滞在許可が発行されたため、結果が出るまでの間はストレスと不安とで、胃がきりきりする日々を送る羽目になった。たまたま、世界情勢が変化したのと時を同じくするのだが、私の苦難はそんな大局の変化とはほとんど関係なく、私の勤務する大学や病院の人事の職員があまりにも無責任で、役に立たないせいであった。

 大変だったと言いながらも、6年半もこの国に合法的に居座っているので、今から振り返ってみると、たいした問題ではなかったのかもしれない。とはいっても、滞在許可が切れる2日前に労働許可証が発行され、その翌日(つまり、滞在許可が切れる前日)にようやく滞在許可を更新したというのは、いつ電車が止まるかわからず、いつ職員が病欠するかもしれないこの国では、綱渡り的な出来事なのである。

 このブログのページを始める準備をしていたのは、2005年5月。ちょうど、4回目の更新の手続きのさなかだった。労働許可証の申請が時間切れになりそうで、「不法在留外国人(Illegal immigrant)になるかもしれない」などと、友人たちと言いあっていた。

 そんな時期、Stingの「Englishman in New York(ニューヨークのイギリス人)」の歌詞がふと浮かんだ。

 もともと、外国に住むひとりとして、歌詞には共感するところが多かった。半分冗談、半分本気で、「I'm an alien, I'm an illegal alien, I'm a Japanese woman in London.(私は外国人、不法在留外国人、ロンドンにいる日本人)」などと替え歌を歌っていた。(実際の歌詞は「I'm an alien, I'm a legal alien, I'm an Englishman in New York.」)

 その後まもなく滞在許可が延長できたので、このブログはめでたくも、「Legal Alien in London」となった。

 「Legal Alien」は合法的在留外国人を指すアメリカ英語で、イギリス英語は「Legal immigrant」という。したがって厳密にいえば、このブログは「Legal Immigrant in London」となるべきなのだろうけれど、やはりここは、語感からも、意味からも「Alien」でなければいけないので、そこはご愛嬌で。