Thursday, May 17, 2007

対話するマスコミ1

 海外にいる私にとって、日本の情報を得るための主な情報源は、インターネットのニュースや個人のブログなどである。多少改善されてきた感はあるものの、マスコミ、とくに大手の新聞の医療問題に対する報道姿勢には、嘆きを超えて、呆れることが多い。

 新しい「事件」が起こったとき、初期報道が常に、医師=悪者の構図でなされる。その後の経過の中で初期報道が事実を伝えていなかったとしても、それを検証・訂正する姿勢がまったくない。マスコミは「真実を伝える」という、本来の役割を放棄してしまっているとしか思えない。

 イギリスのマスコミを礼賛するつもりはない。しかし、新聞やTVが一斉に同じ方向を向いた報道をしないこと、マスコミが自身に対する批判や意見を受け止めるための公開の場を提供していることは、賞賛してもいいと思う。

 Guardian紙のオンライン・サイトには「Comment is free」というサイトがあり、Guardian紙とObserver紙(日曜版)のほとんどの署名記事にここからアクセスでき、読者がコメントを投稿できる。Times紙のWeb版TimesOnlineでは、署名記事だけでなく、一般の記事にもコメントを投稿できる。いずれも、事前に登録した読者に限定されている(登録は無料)が、登録してあるかぎり、編集者のチェックなしに投稿できる。コメントの内容については読者の良識にまかされおり、本当にひどいもののみ編集者によって消去され、投稿した人の登録が取り消されるようである。

 日本の掲示板やブログでは、新聞記事を転載し、その記事に関する意見をエントリーし、コメント欄を通じて討論がおこなわれる。基本的な討論の方法はThe GuardianやTimesOnlineと同じだが、肝心なのは、討論がマスコミの土俵でおこなわれるのか、別の場所でおこなわれるのかの違いである。

 討論がブログ上でおこなわれている場合、そこにアクセスした人しか、討論を目にすることはない。それ以外の多くの人たちは、そのような討論がおこなわれていることすら知らない。

 これが新聞のウェブサイトで、記事のすぐ下、同じ画面上で繰り広げられていれば、より多くの人たちが目にすることになる。記事を書いた記者やコラムニストは、反響に対し、対応する相手を選ぶことができなくなる。

 私が普段読んでいる日本の新聞で、読者からのコメントを幅広く受けつけているウェブサイトは、まだ見たことがない。

 医師の世界の閉鎖性や自浄作用のなさを非難し続ける日本のマスコミ。そっくり同じ言葉をお返ししたい。対話する方法は、すでにそこにある。使うかどうかは、あなたたち次第である。

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