Tuesday, January 01, 2008

新年のごあいさつ

 まったくお正月気分を感じないまま、2008年が始まってしまいました。

 2007年は、私にとって、しんどいながらも我慢して、ようやく次へのステップのための光が見えかかってきたという年でした。

 コンサルタントとして2年目を迎え、日々のルーティンに埋没せずに、チャレンジを続けなければ と気負っていたのですが、1年が過ぎてみたら、チャレンジのほうが寄ってきてくれて、心配は杞憂でした。メインの仕事のPAMSというチームは2年目に入り、マネージメントサイドとの蜜月時代は終わり、厳しい数的目標をクリアすることが求められるようになりました。いかにサービスの質を下げずにマネージャーたちの要求に応えるか、チーム・リーダーとともに頭を絞る毎日でした。また、12月からは、Assertive Outreach Serviceというチームに週1日関わっています。サービスの対象となる患者さんがPAMSとは異なるため、仕事のスタイルを変えなくてはいけなくなりました。

 NHSの財政難は悪化するいっぽうで、私の所属するNHSトラストでも「サービス再編計画」が着々と進行中です。計画は猫の目のようにくるくると変わり、いろいろな噂が飛び交う中で仕事をするのは、精神的に落ち着かないものでした。しかしいっぽうで、こういった厳しい状況の中でも、 優先順位をつけて、意味のある新しいモデルを作るべく知恵を絞る同僚たちの中に、これまでに新しいものを生み出してきたイギリスの伝統を見る思いがしました。もっともこれは裏返すと、作っても改良せずにすぐに捨ててしまうという悪い伝統でもあるので、 もったいないとも思いましたが。

 メインの仕事が落ち着かない中で、サブの仕事として、ロンドン在住の日本人を対象にした外来と、てんかんの精神科的問題を主に診る外来を始めました。私がずっと興味を持ち続けてきた、あるいは私だからこそできるテーマの外来を持つことができたのは、仕事への意欲を高めてくれるだけでなく、仕事の内容のバランスを保つ上でも、本当によかったと思います。始めたばかりで大変なことも多いですが、今年はこれらを軌道に乗せていきたいと思っています。

 もちろん、仕事ばかりしていたわけではありません。イギリスに来てしばらくは、サルサに凝り、よく踊りに行っていたのですが、 ここ数年、踊ることへの情熱はすっかり冷めていました。昨年秋に、Tango fireというパフォーマンスを見て、タンゴに魅せられて、タンゴのレッスンを始めました。 ダイナミックで自由なサルサに比べると、タンゴの動きはひじょうに 繊細かつ厳格で 、初めの頃はただ前に進むのにも苦労するというありさまでした。初心者向けのコースが終わり、ようやくフォローのしかたが少しわかるようになったところです。今年はミロンガにデビューするのが目標です。

 ロンドンに来てから、もうすぐ丸8年になります。日本に一時帰国するたびに、浦島太郎のような気分になります。臨床の仕事を始めてからは特に、英語が少し上達し、英語的な論理で動くことが増えたせいか、自分自身の一部が少しずつ「英国人化」していくように感じ、複雑な思いがすることがあります。けれど、ここに住んで仕事をしていく以上、これは止められないことなので、多民族・多文化都市ロンドンで、World citizenとしての生き方を模索していこうと開き直っています。

 みなさまにとって、かけがえのない、素晴らしい年になりますよう、心からお祈りします。

 2008年元旦