Monday, May 08, 2006

Metroは天下のまわりもの

 私は地下鉄とバスを使って通勤している。自宅から職場まで、約30分ほどかかる。地下鉄に乗っている時間は20分弱なので、読書をするにはやや短い。バスと違って、景色を眺めるわけにもいかず、中途半端な時間である。

 そんな朝の通勤の友は、「Metro」である。これは、月曜から金曜まで発行されるフリーペーパーで、ロンドンでは地下鉄の駅に置いてある。

 Metroは、1999年にまずロンドンで創刊された。20分で読めるほどの新聞ということでデザインされており、タブロイド・サイズで、折り目のところはホチキスで閉じられている。創刊後、発行部数・発行都市ともに拡大し、今では、イギリスとアイルランドの12都市であわせて100万部を超える発行部数を誇り、実際の読者数は170万人と言われる。これは、日曜版をのぞく新聞発行部数で、The Sun、Daily Mail、Daily Mirrorに次いで4位である。(Wikipediaより。)

 フリーペーパーとはいえ、国内ニュースに加えて、国際ニュースや地方のニュースもカバーしている。エンターテイメント(芸術・映画・シアター)の情報はとくに充実している。映画評に関しては、私は、日刊紙の中では Metroが一番信頼できると思っている。

 困ったことに、私が使っている地下鉄の入り口には、Metro専用ラックが置かれていない。そのため、Metroを手に入れるのは、地下鉄に乗ってからになる。電車がホームに入ってくる時に、Metroが捨ててある座席がある車両を注意深く選ばなくてはならない。

 ロンドンでは、人が読んで捨てていった新聞を拾って読むのは、別に恥ずかしいことではない。とくに、Metroの場合は、そうである。(だからこそ、読者数が発行部数の1.7倍になるのだと思う。)よって、Metroを車内で手に入れようと考えている人は他にもいるので、競争が生じることもある。恥ずかしくはないとはいえ、電車のドアが開くなり、Metroめざしてダッシュするのはさすがに気が引ける。周りの人の様子を横目で見て、さりげない風をよそおいながらも、抜け目なく、窓際や座席に置いてあるMetroを手に取り、席に着かなくてはならない。

 8時半前後に電車に乗ると、山ほどMetroが捨ててあり、不自由しないのだが、それより早かったり、遅かったりすると、供給量が減り、Metroを読めないこともある。朝の通勤は、Metroが手に入ることが条件付けになっているため、たまたま手に入らないと、約20分間、気分が落ち着かないまま、電車に乗っているはめになる。

 Metroに関して、いつも不思議に思うことがふたつある。

 Metroは、Associated Newspapersという会社が発行しているのだが、この会社は、Daily Mail(日刊のタブロイド紙)とEvening Standard(ロンドンの夕刊紙)も発行している。ひとつの会社が3つも新聞を発行していて、それぞれ足を引っ張って売り上げに影響しないのだろうか。

 もう一点は、朝の地下鉄に山ほど放置されるMetroは誰が片付けるのだろうかという疑問である。もちろん、地下鉄の清掃の人なのだろうけど、Associated Newspapersは、この清掃に何らかの費用負担をしているのだろうか。それとも、Transport for London(ロンドンの地下鉄を管理している団体)が、ロンドン市民に20分とはいえ活字に触れる機会を作ってくれてありがとう、とか、Metroを読んでいる間は乗客がとりあえず静かにしているから助かる、などという理由で、逆にAssociated Newspapersに感謝しているのだろうか。

 まあ、私の小さな疑問など、毎日ちゃんとMetroが読めさえすればどうでもいいのだけれど。ちなみに、私は、週に1回くらいは、他の新聞を買って読んでいる。日系のフリーペーパー(日本語で書いてあり、日本のニュースも読めるフリーペーパーが4つある。)も、手に入る時は必ず読んでいる。

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