Saturday, May 06, 2006

Membership

 昨日は、私のチームのスタッフ・グレードの精神科医であるHの、王立精神科学会の会員資格(Membership of the Royal College of Psychiatrists, MRCPsyc)の授与式だった。昨年の秋の会員資格試験(membership examination)に合格した数百人が出席し、数人の学会役員などからのスピーチに続いて、学会の偉い人からひとりひとり会員証を渡され、写真を撮り、そのあと、合格者がいくつかのグループに分かれてさらに集合写真を撮ったそうである。

 Royal College of Psychiatrists (RCPsych)は、イギリスおよびアイルランドの精神科医を対象とした学会である。前身であるAssociation of Medical Officers of Asylums and Hospitals for the Insane(なんという名前!)は1841年に創設され、Medico Psychological Associationと名前を変えた後、1926年に王室の認可を受け、Royal Medico Psychological Associationとなり、1971年より現在の名称となっている。

 RCPsychは、会員資格試験を運営し、研修病院の監査・承認をするほか、精神科医の生涯学習(continuing professional development, CPD)のためのさまざまな活動を企画・運営したり、学会や講演会を開いたりしている。一般への精神保健・精神疾患に関する啓蒙活動もしている。British Journal of Psychiatry、Psychiatric Bulletin、Advances in Psychiatric Treatmentは学会が発行している雑誌で、それ以外にもいろいろな出版物を発行している(そうである)。

 MRCPsychというのは、いってみれば「精神科専門医になるための前期精神科研修修了証明」とほぼ同義語である。会員試験は二段階に分かれ、一次試験(Part 1)と二次試験(Part 2)があり、それぞれ年に2回行われる。Part 1は、精神科前期研修を12ヶ月間修了した時点で、Part 2は、Part 1に合格し、かつ、前期研修を30ヶ月間修了した時点で受験資格が与えられる。最近の合格率は、Part 1・Part 2とも、複数受験者の合格を含めて、50%程度だと聞いている。会員になって初めて「精神科医」と名乗れるようになり、後期研修のSpecialist Registrarのポストに応募することができるようになる。

 さて、私の場合、日本での研修・臨床歴がイギリスの後期研修修了と同等にあたるとみなされて、こちらでの研修なしで精神科専門医となったため、MRCPsychの試験は受けていない。よって、RCPsychの会員ではない。会員でないと、仕事に支障が出るほどではないものの、時に不便なことがある。たとえば、コンサルタントは CPDの活動を記録するために学会の運営するCPDシステムに登録するよう求められているが、会員の場合、無料で学会の電子CPDシステムに登録できるのに、非会員は年間150ポンド払わなければいけない。また、会員でないと参加できない学会や研究会がいくつかある。

 学会費は高いけれど、ことあるごとに入会するよう勧められるので、会員になるのもやむなしかと思い、RCPsychに入る方法があるかどうか調べてみた。

 まず、正規の会員はもちろん試験を受けなければいけないので、無理である。

 ほかに、Affiliateship(あえて訳せば、準会員となるのだろうか。)とInternational Associate(国際会員)がある。Affiliateshipは、MRCPsychは持っていないが、イギリスまたはアイルランドで、精神科研修医やコンサルタント以外のポスト(Staff GradeやAssociate Specialistなど)についている精神科医が対象である。International Associateは、MRCPsychは持っていないが、5年以上の精神科経験があり、精神科専門医の資格を持つ、イギリスまたはアイルランド以外に住む精神科医が対象になる。

 私は、MRCPsychは持っていないが、精神科専門医資格を持ち、イギリスに住んでいて、コンサルタントのポストについているので、どちらにも該当しない。つまり、どうやっても学会には入れてもらえないのである。

 私のように、学会に適当な会員資格がないために入れない精神科医は年々増えているようである。たとえば、EU加盟国出身者は、自国での研修が自動的に認められるため、イギリスまたはアイルランドに行ってSpecialist Registrarまたはコンサルタントになれば、結果として私と同じような立場になる。

 この問題に対処すべく、学会では、外国で研修したためにMRCPsychを持っていないSpecialist Registrarまたはコンサルタントを対象とした、新しい会員資格をつくる準備をしているようである。新しい資格の仮称はAssociate Member of the Royal College of Psychiatrsits (AMRCPsych)という。

 ちなみに、このMRCPsych、登録料が141ポンド、年会費が334ポンドである。AMRCPsychも、年会費は同じになる予定である。税金の控除対象になるとはいえ、高い!

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