Saturday, April 28, 2007

発音のクラス–英語の発音1

 先週から、English pronunciation: stage 3のクラスに通い始めた。City Litというアダルト・エデュケーション・センターで週1回、19時40分から2時間、10週間のコースである。

 stage 3は一番上のグレードである。stage 3を受けるためには、City Litでstages 1と2を修了していなければならない。私は、2001年にstages 1と2のクラスを続けてとったので、5年半のブランクを経てのstage 3である。2001年当時は、stage 3のクラスはなかったのだ。いずれ始まるという話はあったもののなかなか実現せず、いつのまにかチェックするのを忘れてしまっていた。

 半年ほど前、ふと思い立ってCity Litのホームページをのぞいてみたら、なんと、stage 3があるではないか。早速面接に行き、その足で申し込みをした。stages 1と2は、いくつかクラスがあるが、stage 3はひとつしかない。定員は12人なので、早く申し込まないとすぐに満員になってしまうのである。

 stages 1や2を取った時は、申し込み自体がこんなに簡単にはいかなかった。私が外国人で、イギリスに来てまだ2年目だったからである。アダルト・エデュケーション・センターは教育機関なので、国から補助を受けている。そのため、イギリス人とEU出身者が優先される("home" studentという)。イギリス国籍のある人でも、3年間イギリスを離れていると、home studentではなく、"overseas" student扱いになる。overseas studentは、home studentだけでコースの定員が埋まらなかった場合に限り、home student用の学費で受講できる。どうしてもhome枠に割り込んで受講したければ、home用の3倍の学費を払わなくてはならない。

 もっとも講師側も慣れていて、同じコースでいくつかクラスがある場合、空きができそうなクラスを教えてくれ、見学用のパスをくれる。それを持って初回の授業に参加し、次回からは、空いている席にhome studentのかわりとして受講できるようになるわけである。

 私はフル・タイムの仕事をしており、すでに英国滞在が3年を超えていることもあり、今回はhome studentとして問題なく登録できた。そうでなければ、ひとつしかないクラスを受講できる可能性は、ほとんどゼロだっただろう。

 さて、この発音のクラス、これまでに挑戦してきた数々の英語学習法の中でも、一番学習効果が得られたものである。2001年の半年間、このコースで発音を学習したのが、その後の英語上達の土台になっている。効果がすぐに目に見えてあらわれたわけではなかったが、あの半年がなければ、その後の上達はなかったと思う。

 講師は、5年前と同じJ。登録した時は、クラスが始まるまでに復習しておこうと思っていたのだが、なにもしないままに半年経ってしまった。まあ、徐々に思い出すだろう。楽しみである。

Friday, April 27, 2007

MTASその後

 MMCの迷走はその後どうなってしまったのだろうか、と思っている方がいるかもしれない。指導医たちが、MMCが予定通りに開始されるという前提のもと、研修の評価法を巡って議論しているかたわらで、研修医の選考を巡る迷走は、依然として続いている。

 MTASのチーフのProf Alan Cockardに続いて、4月5日には、MMCのNational Clinical AdvisorであったProf Shelley Heardが辞任した。保健相のPatricia Hewittは、ラジオのインタヴューで、ついに、研修医たちに対して謝罪の言葉を口にした。

 緊急見直し委員会が3月22日に発表した案により、応募資格を満たす応募者全員が、第1志望のポストの面接を受けられることになった。現在、新たな面接(ラウンド1Bと呼ばれている)の日程の調整をしている。ロンドンでは新たに5,000人を面接しなくてはならないとかで、面接場所や日程の調節に加えて、面接にあたるコンサルタントの確保におおわらわのようである。SLaMのコンサルタントのところにも、ロンドン・ローテーションのDeanからのメールがまわってきて、ボランティアで面接員を引き受けてくれるように呼びかけていた。

 British Medical Association(BMA)によると、34,250人が18,500の研修ポストに応募したとされている。15,750人が研修ポストにつけない計算になる。Department of Health(DH)は一貫して、そんなに職にあぶれる医師が出るわけがないと言い続けてきた。しかし、先日リークされた文書によると、DHは10,000人の研修医が研修ポストにつけないとみて、善後策を練っているらしい。政府のお得意の予測によると、この10,000人の多くは非英国/EUからの医師となるそうである。英国/EU出身で研修ポストにつけない医師はわずか500から1,300と推定し、優先して対策をたてるつもりでいるらしい。(つまり、非EUの人は知ったこっちゃないということである。)これだけでも問題ありなのだが、さらに、DHは、これらの研修医をVoluntary Service Overseas(VSO)を通じて、海外に派遣することを考慮しているらしい。VSOはボランティアで海外に行く医師のための組織であって、研修ポストの不足を補うものにはなりえないと思うのだが。

 British Medical Associationのアンケートによると、回答した648人の研修医のうち、4.5%の研修医がすでに海外からの仕事のオファーを受けており、55%は、もし研修ポストがとれなければ、海外にポストを求める、44%が医学以外の分野で仕事をさがすと回答している。非研修ポスト(スタッフ・グレードやトラスト・グレード)についてもよいと回答したのは、3分の1に過ぎない。

 MTASは、研修医の選考という本来の目的のためには、すでに無用のものと化してしまっているが、面接日程の調整や応募者への連絡には、これまで同様に使われていた。登録している応募者は、MTASのアカウントを持ち、パスワードで保護された個人のメール・ボックスを通じて、面接の日程や選考結果についての連絡事項を受け取る。

 ところが、先日、2つのセキュリティ・エラーが見つかった。ひとつは、MTAS内でメール・ボックスにアクセスすると、URLに2桁の数字が表示される。この数字を変更すると、パスワードがなくとも、他人のメール・ボックスの情報にアクセスが可能になるというエラーである。もうひとつは、ネットで出回ったある特定のURLを打ち込むと、MTASのサイト上に保存されていた、Foundation Training 1の応募者のリストにアクセスできるというもの。このファイルには、住所や電話番号、犯罪歴、sexual orientation、宗教といった個人情報が含まれていたという。どちらも、呆れて口も聞けなくなるほどお粗末なミスである。

 このセキュリティ・エラーは、新聞やTVで、派手に報道された。MTASのページは即座に閉鎖され、DHは、謝罪と言い訳の混じった声明を出した。

 MTASは現在、「厳重なセキュリティ・チェックのために一時的に閉鎖」されており、4月30日に再開されるそうである。しかし、今後の連絡はどのようにしてとるのであろうか。全員の面接の日程の調整が終わったわけではないと聞く。ラウンド1Bの面接は来週から始まるというのに。DHのお粗末な仕事に振り回される研修医たちが、ほんとうに気の毒である。

Monday, April 23, 2007

帰国売りの本

 日本語の本を8冊、帰国売りで購入した。しめて11ポンド(2600円)。悪くない買い物であった。

 「帰国売り」というのは、イギリス滞在を終えて日本に帰る人たちが、不要品を処分するのに売りに出すことをいう。日系のスーパーマーケットに設置してある掲示板や、インターネット上の掲示板に広告が出ている。私は、UK Mumbo and JumboMixBなどを定期的にのぞいている。

 受け取りに行く手間を考えると値段が割高だったり、人気があるものはすぐに売り切れてしまう。それでも、7年の間に10回近く、帰国売りで買い物をした。炊飯器や変圧器、プリンター、バランスチェア、組み立て式ラック、旅行のガイドブックなどである。

 本は、なかなか難しい。1-2冊だと、わざわざ受け取りに行くのは面倒。いいと思うと値段が不満だったり、すぐに予約済みになったり。

 今回は、8冊もいいと思うものがあったのと、受け取り場所が歩いて行ける距離だったので、早速連絡したら、運よく、8冊とも手に入れることができた。

 日本語の本は貴重である。日系の書店で新品を買うと、日本の正規の値段の3倍近くする。アマゾンで買って送ってもらうという手もあるが、送料がばかにならない。日系の古本屋もあるが、あまり安くない。

 ふだんは英語の本を読んでいるが、さすがに日本語を読むほど早くは読めない。体調が悪いとき、頭がうまく回らないとき、気分が沈んでいるとき等は、読むスピードががくっと落ちる。ときには、頭が英語をまったく受けつけなくなる。そんなとき、日本語の本は、いい。活字大好き少女(今では活字大好きおばさん)は、本を読んでさえいれば、幸せな気分になれるのだ。

 イギリスに来た初めの年、日本が恋しくなるどころか、ロンドン生活を最大限に楽しんでいた。ところが、秋口、突然のホームシックに襲われた。気分はどんどんうしろ向きになるばかり。どうしようもなくなり、ある日、ジャパンセンターに行き、値札など見ずに文庫本を10冊ほど買いあさり、数日間、部屋にこもって本を読み続けた(仕事には行ったけれど)。これくらいで解消できるホームシックなのだから、かわいいものである。

 日本に帰るたびに、スーツケースに入るだけ文庫本を運んでくるのだが、1-2ヶ月で全部読み切ってしまう。非常用に取っておかなくてはと思いつつ、なかなか自分を律しきれず、ついつい手がのびてしまうせいである。いざ必要になった時に後悔したことは、数知れない。今回の8冊は、大事に取っておかなくては。

Saturday, April 21, 2007

洗眼

 アトロピン事件で目の大切さを痛感して以来、朝の洗眼を日課にしている。左右それぞれ30秒ずつ。すっかり習慣になり、朝のシャワーの前には洗眼というのが儀式化している。きたる花粉症の季節にも、症状の軽減に役立つのではないかと期待している。

 洗眼液は、Optrexというメーカーのものを使っている。日本で愛用していたアイボンに比べると爽快感が足りないのをのぞけば、文句はない。

 問題は、洗眼用の容器である。

 左がイギリスのもの。右が、アイボンの付属容器。(ずっと使っているので、やや年季が入っている。)

 日本製のものは、左右非対称で、内側よりが一番くぼみが深く、外側にいくにつれてカーブが緩くなっている。これを使うと眼窩にびたりとはまる。

 イギリスのものは、左右対称で、くぼみが浅い。これで洗眼すると、外側から液がこぼれてくる。いくつかのメーカーのものを見てみたが、どれも形は似たり寄ったりである。

 私の顔の凹凸が足りないせいかと思い、とびきり彫りの深い友人に、両方とも試してもらった。イギリス製のものは、容器の外側の端が目の外側ぎりぎりにくるように使うと、かろうじて中の液体がこぼれない。しかし、容器が軟組織にあたって不快だという。日本式のものは、液もこぼれないし、使い心地がいいと言っていた。

 彼ほど彫りが深くない人たちは、この容器でどうやって洗眼しているのだろうか。不思議である。

Thursday, April 19, 2007

指導医研修その2

 昨日の研修では、Royal College of Psychiatrists(王立精神科学会)から、新制度の立ち上げに関わっているコンサルタントが2人来て、SLaMのコンサルタントたちに、評価制度の枠組みが決まるまでの背景、評価制度の大枠の説明をした後で、全員で模擬面接ビデオを使って、mini-Assessed Clinical Encounter(mini-ACE)の練習をした。mini-ACEでは、研修医は15−20分程度かけて患者の面接をする。

 ST3の研修医という設定の男性医師が、俳優さんが演じる、大量服薬で自殺を図った女性の診察をしている。評価項目は下記の7点。

  • History taking
  • Mental state examination
  • Communication skills
  • Clinical judgement
  • Professionalism
  • Organization/efficiency
  • Overall clinical care
 評価者は、それぞれの項目について、各項目ごとのST3の到達レベルと採点基準のマニュアルをもとに、1-6段階で評価する。総合で4というのが合格ラインである。ビデオをじっと見る人、メモを取る人、マニュアルをちらちらと見る人。みな真剣だった。

 それなのに、結果はといえば、笑ってしまうほどにばらばらだった。総合点は2から5まで割れ、半数がこの研修を合格とし(4以上)、半数が不合格(3以下)とした。研修医のパフォーマンスから得る印象は、みな似たり寄ったりのようなのだが、点数化するとまったく一致しない。ちなみに、学会の模範評価は、総合点2の不合格だそうである。

 公平性と一貫性をどのように保つのかが大きな課題であるということで、全員が一致した。

 ほかに問題点として指摘されたのは、誰が評価するのが一番客観性が保てるかという点である。WPBAは、他の試験同様、試験の場でのパフォーマンスが唯一の評価の対象になる。自分が指導する研修医を評価すると、評価がどうしても甘くなるのではないかという意見が出された。直接の指導医以外のコンサルタントが評価するほうがいいのかもしれない。

 そして、一番の課題は、時間である。忙しい臨床現場で、どのように評価の時間を取るのか。学会から来たコンサルタントたちは、通常の1時間のスパーヴィジョンで十分こなせると言っていたが、不安は残る。

 新制度が始まる8月まであと4ヶ月もない。今後も指導医研修は続くそうである。

 余談であるが、ビデオに出演した医師は、オックスフォードの後期研修医で、パフォーマンスの程度をあらかじめ指示されて「演技」したそうである。彼の臨床能力が不合格のレベルなわけではない、近い将来、仕事の面接で彼をインタヴューすることがあったら、あれが彼の実力とは思わないように、と、学会からきたコンサルタントは念を押していた。