Thursday, April 19, 2007

指導医研修その2

 昨日の研修では、Royal College of Psychiatrists(王立精神科学会)から、新制度の立ち上げに関わっているコンサルタントが2人来て、SLaMのコンサルタントたちに、評価制度の枠組みが決まるまでの背景、評価制度の大枠の説明をした後で、全員で模擬面接ビデオを使って、mini-Assessed Clinical Encounter(mini-ACE)の練習をした。mini-ACEでは、研修医は15−20分程度かけて患者の面接をする。

 ST3の研修医という設定の男性医師が、俳優さんが演じる、大量服薬で自殺を図った女性の診察をしている。評価項目は下記の7点。

  • History taking
  • Mental state examination
  • Communication skills
  • Clinical judgement
  • Professionalism
  • Organization/efficiency
  • Overall clinical care
 評価者は、それぞれの項目について、各項目ごとのST3の到達レベルと採点基準のマニュアルをもとに、1-6段階で評価する。総合で4というのが合格ラインである。ビデオをじっと見る人、メモを取る人、マニュアルをちらちらと見る人。みな真剣だった。

 それなのに、結果はといえば、笑ってしまうほどにばらばらだった。総合点は2から5まで割れ、半数がこの研修を合格とし(4以上)、半数が不合格(3以下)とした。研修医のパフォーマンスから得る印象は、みな似たり寄ったりのようなのだが、点数化するとまったく一致しない。ちなみに、学会の模範評価は、総合点2の不合格だそうである。

 公平性と一貫性をどのように保つのかが大きな課題であるということで、全員が一致した。

 ほかに問題点として指摘されたのは、誰が評価するのが一番客観性が保てるかという点である。WPBAは、他の試験同様、試験の場でのパフォーマンスが唯一の評価の対象になる。自分が指導する研修医を評価すると、評価がどうしても甘くなるのではないかという意見が出された。直接の指導医以外のコンサルタントが評価するほうがいいのかもしれない。

 そして、一番の課題は、時間である。忙しい臨床現場で、どのように評価の時間を取るのか。学会から来たコンサルタントたちは、通常の1時間のスパーヴィジョンで十分こなせると言っていたが、不安は残る。

 新制度が始まる8月まであと4ヶ月もない。今後も指導医研修は続くそうである。

 余談であるが、ビデオに出演した医師は、オックスフォードの後期研修医で、パフォーマンスの程度をあらかじめ指示されて「演技」したそうである。彼の臨床能力が不合格のレベルなわけではない、近い将来、仕事の面接で彼をインタヴューすることがあったら、あれが彼の実力とは思わないように、と、学会からきたコンサルタントは念を押していた。

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