Friday, March 30, 2007

迷走するMMC-1

 Modernising Medical Career(MMC、医師のキャリアの近代化)による研修医の選考は、さらに混迷の度を深めている。(「白衣を着て街に出よう」もご覧ください。)

 MMCは、Department of Health(DH)主導による医師の卒後研修制度の改革で、研修医の選考・評価を各Royal College(各科の王立学会)からDHによる管理に移し、全国標準化するというのは、その目玉である。DHのエージェンシー組織であるMMCチームが、一連の改革を運営している。

 旧来の制度では、医学部入学から専門医研修の修了まで、最速でも11-14年かかっていた。新しい制度では、2年間の初期研修(Foundation Training、FT)と、それに続く中期・後期の専門医研修を4年間の一貫制専門医研修(Speciality Training、ST)で、医学部入学から11-12年で専門医研修が修了する。また、これまでの専門医研修に比べて研究面の研修を減らし、臨床面を重視する研修内容になる。

 FTは2年前に導入された。今年8月に初代のFT修了者が出るのと同時に、STが始まる予定である。すでにSpecialist Registrar(SpR、後期研修医)としての研修を始めている人たちはそのまま旧制度で研修を終えることができるが、Senior House Officer(SHO、中期研修医)は、8月からは、新しい研修制度下、現在のレベルと同等のSTレベルに移行して研修を続けることになる。

 

 今回の選考は、FT修了者がST1へ進むのと、現在のSHOがST2-4のポストに移るためのものである。1-4月にまず第1ラウンドの選考があり、そこで埋まらなかったポスト、新たに作られたポストについて、4月以降に第2次ラウンドの選考をすることになっている。

 応募には、Medical Training Application Service(MTAS)という、全国一律のコンピュータ・システムが使われた。ポストは、各専門科・グレード・地域ごとに割り振られ、1人の研修医は、専門科・グレード・地域の組み合わせを第1-4志望まで選択して応募する。

 審査は、応募条件を満たしているかどうかの予備選考(long list)を経て、標準化された方法によって採点された合計点により1次選考(short list)が行われる。short listされた人だけが、面接による第2次選考に進むことができる。

 MTASはすでにFTの募集・マッチングに使われているため、STの募集のための事前の十分なテストなしに導入されたらしい。実際、募集開始前より、MTASの信頼性や採点方法の適性度、公平性に対する疑問や不安の声があがっていた。

 案の定、MTASは期待されたようには機能しなかった。予想を大幅に越える応募者がアクセスしたため、システムはしょっちゅうクラッシュした。応募書類の内容の不備が数多くあり、応募を開始してから徐々に改善される始末であった。応募書類が行方不明になったりもしたらしい。そのため、応募締め切りは延長された。

 問題がさらに大きくなったのは、2月28日に結果が発表されてからである。22,000のポストに対して30,000人を超える応募があったため、8,000人が面接に呼ばれなかった。1次を通った人たちも、応募したのとは異なるグレードや専門科、地域のポストの面接に呼ばれるという事例があちこちで報告された。

 当然、選考に漏れた研修医たちは怒りの声を挙げた。この頃より、コンサルタントたちからも、遅まきながら、システムを非難し、研修医をサポートする声が上がり始めた。Daily Telegraph紙がBack Our Doctorsというキャンペーンを開始し、保守党党首のDavid Cameronが政府を非難し始めた。各王立学会や著名な医師・教授たちもMTASの正当性を疑問視する声明を次々に出した。

 保健相のPatricia Hewittは、これらの圧力の中、結果発表から1週間もたたないうちに、緊急の見直しのための委員会を設置せざるを得なくなった。委員会は設置からわずか3日後の最初の声明で、早々にMTASの不備を認めた。その後、合わせて3回の「緊急見直し案」が出された。当初は、1次選考に漏れた応募者の書類を見直すことを提案していたのだが、回を追うごとに委員会の妥協の範囲が広がり、3月22日に発表された最新の「見直し案」では、応募条件を満たしている応募者全員が第1志望のポストの面接を受けられることになった。

 混乱の中、2次面接は予定通り進められている。当初は、個々の履歴書はいっさい参考にせず、標準化された質問に対する解答のみしか採点しないとされていた。しかし、見直し委員会は早々に、履歴書と業績集を使うことを認めた。相次ぐ変更により、現場の面接担当者にかなりの混乱が見られるらしい。

 最新の見直し案は、いまだに「案」の段階で、実際にどのようにして応募者全員の第1志望の面接を実施するのかは、来週になるまで発表されない。すでに第1志望以外のポストの面接が終わった人も、希望すれば第1志望ポストの面接を再度受けられるのだが、これをどのようにしてピックアップするのかすら、まだ決まっていない。

 今日はついに、MMCのNational DirectorのProf Alan Crockardが辞任した。辞任の手紙の中で、彼は、MMCはうまく進んでおり、今回の混乱は、DHが導入したMTASの不備によるものだと釈明している。

 法的手段に出る人たちも出てきている。1次選考に漏れた研修医たちは、Data Protection Actに基づき、選考結果の開示を求めた。これに対し、MMCが第2ラウンドが終了するまでは結果を公表しないと回答したため、これがData Protection Actに反すると、法廷に持ち込もうとしているグループがいる。Mums4Medicsは、Prof Alan Crockardを医師倫理に反しているとして、GMCに調査を要求している。Remedy UKは、一連の選考の正当性を巡り、法廷で争う構えを見せている。

 この混乱により、第1ラウンドの遅延は必至である。8月までに第2ラウンドの選考が終わり、研修医がきちんと配置される可能性は、どんどん小さくなっている。8月以降、研修医の不足により、NHSのサービスが一時的に停止するのではないかという観測すら出てきている。

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