Saturday, March 17, 2007

白衣を着て街に出よう

 今日はWhite Coat Marchだった。Department of Health(DoH)主導の新しい研修制度に対する抗議のデモ行進のため、ロンドンの街に、12,000人の医師とそのサポーターたちが繰り出した。エジンバラでも同時進行のデモ行進があった。

 イギリスの研修制度はこの2ヶ月間、大揺れに揺れている。Modernising Medical Career(MMC、医師のキャリアの近代化)と呼ばれる新しい研修制度のもとでの研修医の選考が、大混乱を来しているためである。

 今年2月、専門研修(Speciality Training、ST)の募集が始まった。旧制度から新制度への移行期にあたるため、旧制度で中期専門研修をすでに始めている研修医たちも、新制度の該当するレベルにあらためて応募しなければいけない。22,000のポストを巡り、DoHの予想よりずっと多い30,000人が、MTAS(Medical Training Application System)という、全国一律のコンピュータ・システムによる第1次選考に応募した。ひとりの応募者は第1志望から第4志望まで、4つのポストしか応募できない。

 応募の時点で、MTASの度重なるクラッシュやシステムの不備などが連日報告され、締め切りは1度延期された。続く審査・選考も遅れ、発表も2度にわたり延期された。しかし、2月28日に結果が出てみたら、それまでの問題が些末なことに思えるほど、大変なことになった。

 もっとも影響を受けたのは、現在、中期研修の半ばにある研修医たちである。彼らはST2、ST3(専門研修の2、3年目)に応募したが、その4分の1が、第4志望までのうち、ひとつも第1次選考を通らなかったのである。選に漏れた半数以上は、指導医たちが自信を持って推薦できる、優秀な研修医だという。また運良く選考に通った研修医たちからも、専門科やポスト、グレードの取り違え等があちこちで報告された。

 MMCとMTASに対する批判は日に日に高まり、コンサルタントたちが面接をボイコットしたり、種々のグループ、学会や団体から制度を批判する声明が相次いで発表されるにいたった。当初は強気だったDoHも、発表から1週間のうちに、制度の緊急見直しのための委員会の設置を余儀なくされた。委員会はわずか3日で早々にMTASの不備を認め、選考結果を一部白紙にすることを発表した。それにも関わらず、研修医だけでなく、コンサルタントや医学研究者、研修医の家族たちからの非難の声は、むしろ強まるいっぽうである。

 そんな中でのデモであった。デモ自体は、数人の研修医たちが立ち上げたグループRemedy UKが、MTASの問題が表面化する以前から企画していた。リージェント・パークの近くのRoyal College of Physiciansの本部を11時に出発し、Briish Medical Association、London Deanery、Royal College of Anaesthetistsの本部の前を通過し、ホーボン近くのRoyal College of Surgeonsの本部までという、約1時間のルートである。

 私はコンサルタントであるが、せめて研修医たちへのサポートの気持ちを表したいと思い、同僚のDと一緒に参加した。途中、子どもを連れて参加していたうちの臨床部長に会った。ほかにも、コンサルタントやGPたちが多数参加していたようである。

 私とDは白衣は着ていなかったが(なにしろ、持っていない!)、まわりの研修医たちは白衣や手術着を着て、プラカードを持って歩いていた。時々、シュプレヒコールがあがる。

25K to train, where's it going, down the drain
no ifs, no buts, no doctor training cuts
 写真を撮ったが、ゆっくりとはいえ歩きながらで、おまけに私は背が低いので、あまりうまく撮れなかった。雰囲気だけでも伝わるだろうか。

 これは、信号待ちをしている時に振り向いて撮ったもの。MMCはMassive Medical Cull(医師の大量虐殺)と揶揄されているが、MTASはMedical Training Absolutely Screwed、Medical Turmoil All will Sufferなどと言い換えられていた。

 プラカードのスローガンもいろいろあった。

Protect Our Training, Protect Your NHS
My Training, Your Healthcare, Their Mistake
Jobs 4 Junior Doctors
Demand the Best Doctors
 下の写真はデモの先頭が、最終目的地のLincoln's Inn Fieldsに入ったところ。

 この後、主催者や、政治家たちがスピーチをした。保守党党首のDavid Cameronは、党大会の初日だというのに、この演説のために出発を遅らせたという。

 Dr Grumbleのブログにたくさん写真が載っている。

 このデモ、これで終わってしまってはいけない。政府がきちんと医師たちの声に耳を傾け、研修医たちがきちんと研修を続けられるように動いていくよう、願っている。

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