Wednesday, April 12, 2006

SLaM、おまえもか

 3月25日の記事に書いたNHSの人員削減は、4月12日の時点で7000人を超えたそうである。

 ブレア首相は12日に、赤字額の多いNHSトラストのトップを官邸に集め、 Breakfast seminarを開いた。この席でトップたちは、患者を日帰り患者として治療し、午前中のうちに退院させることで患者の滞在費を削減したとか、歩ける患者はストレッチャーに載せずに手術室まで歩いていってもらうことで、ストレッチャーの移動にかかるポーターの人件費を大幅に減らした等の、コスト削減策を披露したと報道されている。

 さて、4月6日より新しい会計年度に入った。今年度は、6年間の予定のNHS改革の5年目で、年率7%程度の予算増額が織り込み済みである。拡充した予算は、6つの重点分野に分配される。

  • 2010年までに、医療の地域格差を10%削減する
  • がん患者に対して、数的目標に沿ってより迅速な治療を提供する
  • 家庭医が紹介してから病院で治療を受けるまでの待機期間を2008年までに18週以下にする
  • MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)感染を毎年減少させる
  • 病院での診療予約に際し、どの患者も最低4つの予約時間の選択肢を与えられる
  • sexual health clinicへのアクセスを改善させる
 これらの重点分野以外は、予算の現状維持はおろか、削減も覚悟しなくてはならない。なかでも、公衆衛生、精神保健医療、社会福祉の分野は、苦労するのではないかと言われている。

 さて、私の所属するSLaMランベス区にも、コスト削減の波がついにやってきた。中長期的なコスト削減策は、これまでにも少しずつ動いていたが、直接ベッドが減らされたり、人員が削減されたりすることはなかった。むしろ逆で、Lambeth 10-Year Reviewの結果、ふたつの新しいチームが導入されていた。

 今日、ジェネラル・マネージャーが、予定されていた入院を数件凍結すると通達した。対象となったのは、女性専用の治療共同体型施設のDove Houseと、入院型リハビリ施設のHopton Roadである。今回の入院凍結の先には、施設のベッド数削減、または施設閉鎖の計画がちらほら透けて見える。

 どちらの施設も、急性期病等のように、なくなってすぐに日々の臨床に支障を来すような病棟ではないが、地域精神医療の治療の場や、治療方法に幅を持たせ、既存の治療システムのギャップを埋める性質の施設である。Dove Houseなど、オープンしてからまだ2年しかたっていない。

 中長期的なコスト削減策も着々と進行中である。SLaMランベス区は、総合病院であるSt Thomas病院の一角をリースして、2つの精神科病棟と、精神科外来を開いている。リース代をカットし、スタッフを効率よく回転させるため、1-2年のうちにこれらの外来・病棟を閉鎖し、精神科のみのランベス病院の敷地内へ移すという計画がある。あるコンサルタントは、半世紀かけてようやく精神科外来・病棟を一般病院に移すことに成功したのに、10年後にまた精神科単科施設に逆戻りする、と嘆いていた。

 医療スタッフの気持ちを逆なでするような話である。

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