Sunday, January 14, 2007

Job interview 2−私の経験

 先日の面接は、私にとって2度目の選考委員としての経験だった。ちなみに1度目は、約1年前、自分のチームのスタッフ・グレードの医師の面接だった。

 反対に、面接を受ける側としては、これまでに、今の仕事のインタヴューを含め、3回の面接を受けた。

 最初のインタヴューは、地域精神保健医療サービスのローカム・コンサルタント(正規のスタッフが決まるまでのつなぎの仕事)のポストだった。2年前の2月、当時の臨床部長のAに「仕事が欲しい」とメールを送ったら、Aから、「よかったら、ちょうどローカムを募集してるから、応募してみたら」という返事が返ってきたのだ。(私の仕事遍歴については、こちらに詳しく書いてあります。)

 よかったらどうと言われたって、いくら専門医登録しているとはいえ、イギリスの臨床経験がまったくない人間が、いきなりコンサルタントとして働けるほど世の中は甘くはないだろうと思ったが、自分から頼んでおいてむげに断るのも失礼かと思い、いわれたとおり、半日で応募書類を書き上げて、人事に送った。

 いきなりコンサルタントの仕事ができないのは明白である。応募書類には、「私の現時点での知識と経験では、コンサルタントをして働くのは無理だと思うので、スタッフ・グレードとして、指導を受けながら、限定された責任レベルから仕事を始めたい。」とはっきり書いた。コンサルタントのポストに応募しているのに、コンサルタントとして働けないと書くのもとんでもない話だが、本当なのだから仕方がない。だいたい私は、コンサルタントなら当然もっている、Section 12(2) approval(日本の精神保健指定医のような資格)を取得していなかった。もとより、このポストがとれるわけがない。Aが私の誠意と真剣さをわかってくれ、今後につながればよいという気持ちだった。

 仕事を手にするためのこちらでの「お約束」として、「informal visit(非公式訪問)」というものがある。これは、募集しているポストを現在担当している人や、そのチームを「非公式」に訪ね、見学することである。実際には、このinformal visitで相手側に与える印象も選考の際に考慮されることが多く、「非公式」というのは名前ばかりである。

 私もお約束を果たすべく、ローカム・コンサルタントの担当するチームに見学に行った。実は、地域精神保健サービスの現場に足を踏み入れたのはこの時が初めてだった。チーム・リーダーに会い、チームを案内され、チームの現況や、対象となる患者の話を20分ほど聞いた。今考えると赤面ものだが、実際は何を聞いてもよくわかっていなかったのだと思う。(おもしろいことに、このとき見学に行った建物が、現在の私のチーム・ベースである。)

 数週間後、不思議なことに、私は面接に呼ばれた。間の悪いことに、ひどい風邪をひいていた。39度を超える熱が数日続いており、ベッドからほとんど動けない状態だった。のどが腫れて、声もあまり出なかった。来なさいというなら行ってやろうじゃないかと、解熱剤をがぶ飲みして熱だけ下げ、文字通り、這うようにして出かけた。

 面接では、Aのほかに、2人のコンサルタントがいた。7つ質問があったこと、とりあえず全部の質問に答えを返したことは覚えている。どのように答えたのかは、よく覚えていない。

 まあ、いずれにしても、私が面接に呼ばれたのは、Aが私を見てみるのにちょうどいい場だと考えたからであったと思う。その日の夕方、Aから電話があり、面接に同席していたコンサルタントたちにしばらくついて、shadowingしてみたらどうか、というアドバイスをもらった。当然、仕事のオファーはなかった。

 それから約1ヶ月後。いくつかの偶然が重なった挙げ句、私はリエゾン精神科のスタッフ・グレードの仕事を手にした。

 次の機会は、同じ年の6月から始めることになった、地域精神保健サービスのスタッフ・グレードのポストの面接だった。本来なら必ずしも面接をしなくてもよかったらしいのだが、私の労働許可証の変更やヴィザの延長の問題があり、面接が必要であった。

 この時は、ボスにあたるコンサルタントのRに事前に会った。面接はAとRによる、本格的な面接だった。

 この2回の面接を受けておいたことは、3度目の、今の仕事の面接のために役立った。どのようなことを聞かれるか、どのような答えが期待されているかといった、面接の構造がわかったからである。イギリスで研修を受けた人たちはみな、こういった面接をくぐり抜けてくるのだ。

 そして、11月の今の仕事の面接。応募書類を出すとすぐ、私は関係のありそうな人に連絡をして、面会の予約をとった。PAMSを含めた社会福祉サービスのマネジャーのMと臨床部長のAにまず会い、ランベス区SLaMのディレクターのP、社会福祉事務所のトップのAに会った。チーム自体が発足していなかったため、チームの見学はできなかったが、そのかわり、チームの運営方針の準備原稿や、チームの発足に至るまでのミーティングの記録等、手に入るものには全部目を通した。

 たまたま、一時同じチームで仕事をしていたSpRのNが、私よりも1ヶ月早くコンサルタントの面接を受けたので、その模擬面接に同席させてもらった。また、以前のボスのRに頼んで、1対1で模擬面接をしてもらった。

 そして面接の日。一張羅の勝負服を着て、面接に出かけた。選考委員は7人。コンサルタントの選考なので、Royal College of Psychiatristsから外部のコンサルタントが1人参加しており、残りの6人は内部のシニア・マネージャーやコンサルタント。lay person(医療専門家ではない外部の人)が1人いて、面接の司会を担当し、人事課のスタッフが記録を取っていた。

 面接は約1時間ちょっとだったと思う。こうして、悪運の強い私は、無事に仕事を手にしたのであった。

 それでも、今から振り返ってみると、私の最後の面接でのパフォーマンスは、先日のTと比べるとひじょうに見劣りのするものであったと思う。(コンサルタントの面接と、シニア・ポストの面接を一概に比較はできないのではあるが。)質問に対する認識の深さもそうだし、答え方、自分の売り込み方等、彼女を見ていて、とても参考になった。

 なんでもそうだけれど、テーブルの反対側に座ると、今までに見えなかったものがよく見える。もし次に面接を受ける機会があれば(ないことを祈っている!)、もう少しうまく対応できそうな気がする。

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