Sunday, January 21, 2007

もっとも陰鬱な日

 2年前、BBCニュースに「1月24日の月曜日はキライ」という記事が載った。1年で一番暗く気が滅入るイギリスの1月。Cardiff大学の心理学者Cliff Arnallsが開発した計算式よると、なかでも、2005年は第4週の月曜にあたる24日が最悪であるという。

 陰鬱公式 = 1/8W+(D-d) 3/8xTQ MxNA

  W: Weather(天候)
  D: Debt(借金)
  d: Money due in January pay(1月の収入)
  T: Time since Christmas(クリスマスから経過した時間)
  Q: Time since failed quit attempt(新年の誓いが破れてからの時間)
  M: General motivational levels(全体的な意欲の程度)
  NA: The need to take action(行動を起こす必要度)

 冬至を境に日照時間は徐々に延びているのだが、クリスマスを前にした気ぜわしい12月が過ぎると、1月は暗く、うっとうしく感じられる。クリスマスの熱気は冷め、楽しかったクリスマスの思い出はだんだん薄れ、クリスマス・ショッピングとその後のクリスマス・セールの出費による借金が残るのみ。年が明けて、新年の誓い(New Year's Resolutions)は長続きせず、早々に破れてしまう。クリスマス休暇中に蓄えたエネルギーも徐々に尽き、意欲が減退する。これらが積み重なって、陰鬱な気分がピークになるのが、クリスマスから1ヶ月過ぎた、1月第3−4週頃だというのが、Cliff Arnallsの説であるらしい。(ひどい気分を指して、bleakとかmiseryという単語が使われているので、「抑うつ」ではなく、「陰鬱」という訳語を使ってみました。)

 ちなみに、ピークが24日の月曜になったのは偶然であると、Arnallsは言っている。Monday Blues(月曜日の憂鬱)は考慮に入れていないということであろう。

 この記事、2005年にはさまざまなアーカイブや個人のブログに引用された。今年に入っても、1月の第4月曜が近づくにつれて、2年前に比べればささやかではあるものの、あちこちで引用されている。ダブリンでは、第4月曜を前にした日曜日に、Recharge Festival(再充電祭り!)と題したストリート・フェスティヴァルを企画している。これを紹介した記事によると、季節性感情障害のための陰鬱公式が心理学者によって開発され、カウンシルで使用されているとある。(「本日の陰鬱情報」とか流しているのだろうか。)

 かくいう私は、ロンドンで7回目の1月を迎えている。感覚として、たしかに1月は気が滅入る。クリスマスとお正月の休み疲れに加え、暗くじめじめした天気がずしっと気分を重くする。もっとも、クリスマス関連の出費はないし、新年の誓いに対するこだわりもないのだが。

 しかし、1月が一番ひどいかというと、私のJanuary Blues(一月病と訳すのだろうか)は、1年のうちにいくつかある落ち込みのピークのひとつでしかない。夏の休暇シーズンが終わった頃とか、急に日が短く感じられる10月から寒さが厳しくなる11月下旬にかけても、気分が落ち込む。

 今年にかぎってみれば、先々週までは天気が悪く、休みぼけが抜けず、おまけに体調を崩したこともあり、気分が冴えなかった。しかし、先週に入って体調ももどり、週の半ばから天気が回復し、金曜から週末にかけては、お日さまが顔を出したおかげか、気分は上昇傾向である。

 2005年の例を今年に当てはめるとすれば、明日の月曜あたりが1年で一番気が滅入る日になりそうだ。天気予報によると、幸いなことに、気温は下がるものの、天気はこの時期にしては珍しく、晴れ間がのぞくいい天気がしばらく続くようである。なんとか一月病を無事に乗り切りたいものである。

 それにしても、あんなにあちこちで取りあげられていたというのに、どれもみなBBCの記事の孫引き(あるいは、孫引きの孫引き)で、原典をあたった形跡がまったく見られない。BBCの記事の公式も、どれが分子でどれが分母なのかやや曖昧なうえ、各因子が具体的に何を指すのかわからず、式があっても参考にしようがない。GoogleもPubmedもCardiff大学のホームページも見たけれど、Cliff Arnallsの陰鬱公式がデータと一緒に載っている原典は、発見できず。見かけたことがある方がいたら、教えてください。

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