Saturday, July 14, 2007

またまたスピン

 あっという間に7月も半ばである。研修医が新研修制度の下で一斉に新しいポストに移るD-Dayの8月1日は、もうすぐそこである。

 ようやく、イングランドにおける、MMC/MTASラウンド1の最終結果ラウンド2の詳細が発表された。6月26日付のデータによると、29,193人の応募のうち、応募資格を満たしている人が27,849人であった。研修ポストの総数は15,600で、ラウンド1でそのうち13,168のポストが埋まった。平均の充足率は85%である。空いているポストについては、10月31日まで、地域ごとにラウンド2の選考がおこなわれることになっている。

 Department of Health(DoH、保健省)は7月12日に出した声明の中で、「大多数の研修ポストがすでに埋まっている。リクルート・プログラムに問題があったにもかかわらず、高い充足率を果たせたことは、患者さんやNHS、Deaneriesにとっていいニュースである。」と言っている。

 例によって、DoHお得意のスピンで、突っ込みどころが満載である。

 本来、ラウンド1は4月に終わり、ラウンド2が6月に終わって、全部のポストがD-Dayまでに埋まっているというのが、MTAS当初の計画であった。選考方法を変えざるを得なくなってからもしばらくは、DoHは、8月1日までにはラウンド2を終えると言い続けていた。ラウンド1の結果が出たのが7月も半ばというのは、大失態である。

 だいたいにおいて、85%は「高い充足率」なのだろうか。D-Dayには、15%のポストに研修医がいないというのに、喜んでいいものだろうか。

 さらに、応募資格を満たしている研修医のうち、14,681人がポストがないのにもかかわらず、空いているポストは2,432しかない。DoHは、年度末までにさらに1,000の研修ポストを用意すると言っているが、それでも、11,000人以上の研修医がポストをとれないことになる。

 声明の終わりのほうまで読んでいくと、UKの卒業者についてのデータが付記されている。UK卒業者の応募総数は13,600人で、そのうちの9,336人(68.6%)がすでにポストを得ているそうである。

 この付記の意図について、いささか理解に苦しむ。DoHは、UK卒業者にはきちんと配慮していると宣伝したいのだろうか。応募資格を満たしているかぎり、出身地による差別的扱いはしないというのがラウンド1の申し合わせであったはずである。

 UK卒業者の合格率68.6%に対し、非UK卒業者の合格率は26.9%である。非UK卒業者の中には、EEA出身者と、HSMP(Highly Skilled Migrant Programme)ヴィザ保持者を主とする非EEA出身者の二通りがある。非EEA出身者の応募資格をUK/EEA出身者と差別化することの合法性については、Judicial Reviewの控訴審で審議される予定で、その結果が出るまでは、差別的扱いはしないという通達が出ている。EEA出身者に関しては、UK卒業者と同等の扱いをすることは既定路線である。UK卒業者を優先的に採用すれば、法律違反である。

 非UK出身者が研修目的で来るのをコントロールする仕組みをきちんと導入できない中、いまだに4,264人のUK卒業者がポストがない。仮に、ラウンド2のすべてのポストがUK卒業者にまわるとしても(そんなことはまずあり得ないが)、832人が研修できない。全UK卒業者のうち6%強である。政府は、医師数を増やすべく、医学部の定数を一気に増やしておいて、卒業者の6%以上が研修の道を閉ざされる結果を招き、みずからのmedical workforce planningに関する無能さをさらけ出している。

 問題なのは、無能なのがworkforce planningだけではないというところであるが。

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