Monday, December 11, 2006

Nitin Sawhney

 昨日は久しぶりにJazz Cafeに行った。去年のRay Barrettoのライブ以来である。(彼は今年亡くなったので、最後のUKライブだった。)

 Nitin Sawhney(ニティン・ソーニー)のアコースティック・ライブの最終日。6日間連続のライブが全部売り切れという人気だった。

 ご存じない方のために、紹介しよう。Nitin Sawhneyというのは、イギリス系アジア人のプロデューサー/アーティスト/DJ/作曲家。クラシック・ピアノ、ジャズ・ピアノ、フラメンコ・ギターの名手でもある。彼の作品は、ワールド・テクノ・ジャズ・ヒップポップ等、多岐にわたり、ひとつの分野に当てはめることができない。最近では、クラシック音楽の作曲にも手を出している。(公式サイトはこちら。英語版Wikipediaはこちら。)

 アーティトであると同時に、アクティヴィストとして、多文化尊重、移民、貧困等、さまざまな面で発言をしている。歌詞にはこれらの政治的なメッセージが込められたものも多く、大きなハコでのコンサートでは、メッセージ性の強いテーマの画像がバックのスクリーンに映し出される。

 生Nitinはこれが4回目。個人的には、電気の使用量がとっても多いコンサートよりも、アコースティックのほうがお気に入りである。(アコースティックとはいっても、2年前の、オーケストラと一緒のコンサートはいまいちだった。)

 クリスマス・デコレーションと、正面の壁の「STFU (Shut the fxxx up) during the performance. (演奏中はお静かに)」の指示の前の舞台に、Nitinの他に固定メンバーが5人。短い曲の紹介をはさむだけで、3人の女性ヴォーカルが次々と入れ替わりながら、ライブはさくさくっと続いていく。途中、Natacha Atlas(アラブ系女性歌手の中ではたぶん一番有名な人)も出てきて、豪華である。

 今回は政治的なメッセージはなしかと思ったら、そこはNitinのこと、「Immigrant(移民)」という歌の紹介の際、「数日前、トニー・ブレアが、イギリスのマイノリティの人たちは、(イギリス社会の人種的)統合のためにもっと責任を持つべきだ言っていたが、この曲は、人間の相違を賞賛する歌です。」とぶったのが、唯一のメッセージだった。もちろん、ときにものすごく重い歌詞を除いてだが。

 この手のアクティヴィティは、こちらでは珍しくない。私自身、自分の政治信条的立場をはっきりさせているし、しっかりと発言もするほうである。しかし、あまりにみえみえのメッセージは、疲れるなと思うこともある。

 政治的なものと叙情的なもの、欧米的メロディと、ラテン、アラビック、アジアの曲が、一見無秩序に織り交ぜられて、英語にベンガル語、ポルトガル語、スペイン語、アラビア語が混ざって歌われる。ときに静かに、ときに熱狂して聴いている観客は、アジア系と、白人(イギリス人も他のヨーロッパ人もいる)が約半々。それ以外の人(アフロ・カリビアン等)が少々。全員が、それぞれのお気に入りの曲に盛り上がる。こういうコンサートそのものが、メッセージを発信しているのではないかというのは、ちょっと理想的すぎるであろうか。

 iTunes StoreでNitin Sawhneyで検索すると、音楽のカテゴリーが、エレクトリック・ワールド・ロックとまちまちになっているのが、なんだかおかしい。政治的なメッセージが嫌いな向きも大丈夫。歌詞は、いろいろな言葉が混ざっていて理解できないものも多いので、音楽だけを心ゆくまで堪能できる。興味のある方は、一度ご試聴あれ。

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