Friday, August 03, 2007

そしてD-Day

 ついに、8月1日のD-Dayがやってきた。15,000人の研修医たちが一斉に新しいポストに移る日である。(これまでの経過はこちら、またはMMC/MTASラベルからをどうぞ。)

 Telegraph紙がD-Dayを前に、RemedyUKと共同で、全国のNHS Trustsを対象に調査をした。100を超えるNHS Trustsから回答があったという。ほとんどすべてのトラストが、研修医の一斉異動による影響に備え、contingency planを用意したという。また、4分の3のトラストで外来(の一部)を、90%のトラストで(緊急でない)手術の一部をキャンセルした。混乱を避けるため、コンサルタントの夏期休暇を一部制限したトラストもあるという。

 BMAも、これまでに明らかになった問題点をリストアップしている。

 Deanery単位で、8割強のポストの合格者名が全部出そろったのが6月下旬。それから、Deanery内の研修ローテーションごとに研修医が割り振られ、さらにトラスト・病院ごとの最終的な割り振りが決まったのが7月半ば過ぎだった。これと並行して、空いているポストのための第2ラウンドの募集・選考が超特急でおこなわれ、1,000以上のポストが7月の後半の3週間の間に決まったらしい。滑り込みでなんとか90%を超える研修ポストが埋まったようだが、D-Dayを直前にしても、どの病院で研修するのか知らされていない研修医が多数いたという。

 暗闇の中にずっと置かれていたのは、コンサルタントたちも同じである。8月から研修医が本当に来るのか、来るとしたらどのレベルの研修医が来るのか、ほとんど情報が来ない。これはとくに外科系では大問題で、割り当てられる研修医たちの研修歴や技能のレベルをまったく知らされていない状況で、手術の予定を立てろというのが無理というものである。外来や手術のキャンセルは、そのためである。

 お粗末な話はまだ続く。NHSに勤務するすべての医師は、勤務開始の前に、CRB(Criminal Records Bureau)のEnhanced levelのチェック(犯罪歴のチェック)をクリアすることが義務づけられている。ところが、TimesOnlineによると、選考結果が出たのが6月の終わりだったため、時間的にCRBチェックが間に合わず、一部の研修医は、CRBチェックなしで仕事を始めることになりそうだという。その多くが外国人医師である。

 7月に起きた、ロンドン・スコットランドでのテロ・テロ未遂事件に絡んで、ブラウン首相が外国人医師へのチェックを厳しくすると宣言したのは、つい最近のことである。その記憶も新しいなか、CRBチェックが間に合わないが、人手不足のため、CRBチェックを待っている余裕はないから、チェックなしで仕事をさせる、などという現場の状況が報道されてしまっては、首相の面目丸つぶれである。(もっとも、事件に関連して逮捕された人たちの中には、すでにCRBチェックを経てからNHSで仕事をしていた医師もいたので、CRBチェックの有効性そのものが疑わしいのであるが。)

 こんな状況で、8月1日がやって来て、静かに過ぎていった。いまのところ、D-Dayに関連した大きなニュースは聞こえてこない。あらかじめサービスを縮小したのが奏効したのだろうか。

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