医師の刑事訴追
イギリスでは、医療関連死亡事故の当事者であった医師が刑事罰に問われることがあるか。答えはイエスである。
日本でいう「業務上過失致死」と同義のイギリスの法律用語は見つからないのだが、私のあやふやな法律の知識とにわか勉強によると、gross negligence manslaughterが同じような意味合いになる。また、医療関連死という面を強調して「medical manslaughter」と呼ばれることもあるようである。
1970年代と80年代には、4人の医師がmanslaughter(故殺罪)で起訴されている。90年代にはこれが一気に17人に増加した(Ferner 2000)。2001-2002年の2年間で、さらに6人の医師が起訴された(Dyer 2002)。1990年に、Crown Prosecution Serviceが職務上のnegligenceによる死亡例をmanslaughterで訴追することを決定したため、主に医師が影響を受け、訴追数が増加したという(Dyer 2002)。
しかし、起訴数が増えても、有罪になる医師の割合はあまり変わっていない。1795年から2005年までの間に、故殺罪で起訴された医師は85人(75件)いた(Ferner & McDowell, 2006)。有罪となったのは、1795-1899年は28%、1900-2005年は30%であった。これは、一般の故殺罪の有罪率と比べると、圧倒的に低い。2001年には、故殺罪による起訴278件のうち238件(86%)が有罪になっている。(Dyer 2002)。(まだ、つづく)
- Dyer C. Doctors face trial for manslaughter as criminal charges against doctors continue to rise. BMJ 2002; 325: 63.
- Ferner RE. Medication errors that have led to manslaughter charges. BMJ 2000; 321: 1212-1216.
- Ferner & McDowell. Doctors charged with manslaughter in the course of medical practice, 1795-2005: a literature review. J R Soc Med 2006; 99: 309-314.
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