ジェネリック クロザピン
以前に「クロザピン」という記事で書いたが、クロザピンは、難治性統合失調症への有効性が確認されている、唯一の抗精神病薬である。稀ではあるが致死的になりうる副作用があるため、定期的な血液検査が欠かせない。イギリスでは1992年の再認可以来、ノヴァルティス社のクロザリル(商品名)が市場を独占していた。
2004年8月、イギリス初のジェネリック・クロザピンである、デンフリート社(Denfleet)のデンザピン(Denzapine)が認可された。認可に至るまでは、ノヴァルティス社がネガティブ・キャンペーンをして公正取引委員会の調査を受けたり、有力な医師や薬剤師がジェネリック・クロザピンの信頼性を疑問視する論文を発表したりと、賑やかだったらしい。3ヶ月遅れて、アイヴァックス社(IVAX)がザポネックス(Zaponex)を発売した。競合品の出現により、クロザピンは薬価とモニターのための費用を引き下げた。
クロザピンは、原則として、精神科のコンサルタントしか処方できないため、薬価はすべて精神保健トラストが負担する。(他の薬の場合、病状維持のための処方が決定したら、GPに処方を戻し、費用は一次ケア・トラストが負担する。)患者1人にかかる年平均の費用(薬価およびモニター代)が約3,000ポンド(約70万円)である。
ジェネリック・クロザピンの認可以来、クロザリルからジェネリック品に切り替えるるトラストが徐々に出始めた。主たる狙いは、支出削減である。なにしろ、300人の患者がクロザピンを服用しているとすると、年間900,000ポンド(約2億円)の負担である。
デンフリート社とアイヴァックス社は、クロザピンの薬価を当初のクロザリルより低く設定し、さらに、クロザリルから切り替えるトラストに割引価格を提示している。(公式には、クロザリルとデンザピンの薬価は現在はまったく同じ、ザポネックスの100mg錠は他よりも約30%安い。)2004年に、クロザリルからデンザピンに切り替えたNorfolkの精神保健トラストでは、280人の患者のクロザピンに関する年間費用を、800,000ポンドから400,000ポンドへと削減できたという(Bazire & Burton. The Pharmaceutical Journal 2004; 273: 720-1)。
SLaMでも、この3月下旬より、クロザリルからザポネックスに切り替えた。切り替え作業は昨年の秋頃から始まり、約半年がかりの作業であった。クロザピンを服用している患者、処方するコンサルタント、処方薬局、血液検査をするクリニックと、すべてが登録制であり、これをひとつの漏れもなく、ノヴァルティスのシステムからアイヴァックスのシステムに移さなければならないのだ。切り替えプロジェクトの担当者と薬剤師たちは、大変だったことと思う。
変更から約3週間。今のところ、変更にまつわる問題は、何も報告されていない。
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