Mental Capacity Act 2005
今日は、丸1日缶詰で、Mental Capacity Act 2005(MCA、成年後見法)の講習を受けてきた。MCAは昨年の10月からすでに施行されているのだが、細かい用語の変更等があり、なかなか頭の中が整理できず、実践上、立ち往生することが多々あった。今日の講習でようやく、これまでの種々の疑問が解決され、臨床で正しく運用できそうな自信がついてきた。
精神科の日常臨床では、法律とのつき合いは切っても切れない。Mental Health Act(精神保健法)がまず頭に浮かぶが、MCAが必要な場面にもしょっちゅう遭遇する。とくに、リエゾンやリハビリテーションの分野では、必要になることが多いと思う。
MCAの施行以前は、財産に関する後見制度はあったが、社会福祉や医療に関する自己決定権については、common lawに基づいておこなわれていた。MCAのもとに、意思決定能力の定義やその(司法的な)評価の方法、適応範囲などが包括的に明文化された。また、Mental Health Actとの使い分けについても、はっきりと示された。
MCAの基本5原則は下記のとおりである。
- Presumption of capacity(意思決定能力は、否定されないかぎり、存在すると推定する)
- Maximising decision-making capacity(自己決定ができるよう可能なかぎりサポートする)
- The freedom to make unwise decisions(非合理的な決定をする自由を有する)
- Best interests(受益者の最大限の利益にかなう決定をおこなう)
- The least restrictive alternative(受益者の権利や自由の制約が最小限にとどまる方法を選択する)
common lawとgood medical practice、基本的人権を念頭におけば常識と思われる事柄が並んでいるが、実際の医療や福祉、財産の保護等の面ではなかなかそのとおりの保護がおこなわれてこなかったことを考えると、こうして並べることに意味があるということはうなづける。
施行後半年もたっているのに自信がないとはけしからんと言われそうだが、新しい法律ができても、現場でのアセスメントや対応は、これまでおこなってきたことと基本的に変わらないため、多少頭の中が混乱していてもあまり不自由しなかったとも言える。
それにしても、法律用語はほんとうに厄介である。なにしろイギリスの法体系についての知識が怪しい上に、法律用語は苦手なので、あわててコンピュータに向かって基本的知識の復習をしなければいけないことなど、しょっちゅうである。(インターネットがなかったら、この検索ひとつとっても、 私の生活は、ものすごく大変なものになっていたに違いない。)
ちなみに、10月に新しいMental Health Act 2007(精神保健法)の施行が控えており、こちらのほうは大幅なシステムの変更があるため、頭の切り替えだけでなく、精神科コンサルタントは再講習が必要になる。
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