若手医師のキャリア選択
昨日、しばらく棚上げにしようと書いておきながら、MTAS/MMCの呪縛からなかなか抜けられない私である。しかし、今日は少し切り口を変えて、医師の新しい(医学以外での)キャリア(alternative careers)についてである。
日本でも、最近の医療を巡る大変な状況で、医者が自分の子どもは医者の道を進ませたくないと思っているとか、医学生が医師以外のキャリアを模索しているといった話を時折目にするようになった。
医師になる以外のキャリア選択は、決して新しいことではない。私が学生の頃も、厚生省の官僚になるとか、外務省の医官になるといった道が、少ないながらも存在した。ここに来て目新しいのは、まったく医学から離れた職を得るという選択肢が入ってきたということなのだろう。
さて、昨今のMTAS騒動で、8月から失業の危機にある研修医たちが、NHSでの研修以外のキャリアとして、まず目を付けたのは、国外で研修を続けるという選択肢であった。オーストラリアやニュージーランド、カナダなどが人気である。イギリスでは、医学生の間に国外で実習することがカリキュラムの一部である上、旧植民地の国との医療資格の互換性もあるため、医師が人生の一時期、外国で仕事をするという選択肢をとるということは、珍しくない。
その後も混乱が続き、医師としての将来への展望がまったく見えない中で、研修医たちの間には、医師という職業にしがみつく必要はないという論調が急速に広がってきた。
そんなところへ、医師のalternative careersに関するカンファレンスが告知された。今週の金曜日、ロンドンで開催される。
医師のalternative careersとしては、軍医、ボランディア組織の医療サポート、旅行医学などの医師としての役割を生かすものから、製薬会社、医科学分野などの医学類縁の仕事、さらには、金融・経営やマネジメントなど、まったく異なる分野の仕事まで、さまざまなようである。
うちのスタッフ・グレートのAが、参加したいが仕事を休んでもいいかと聞いてきたので、私は、自分自身が興味のあることでもあり、喜んで送り出すことにした。彼の報告を聞くのが楽しみである。
医師のキャリアの議論で、国民の税金で医学教育を受けさせてもらいながら、医療に貢献しないとはけしからんというお説教は、日本でもイギリスでも目にする。日本を離れて働いている私も、広い意味では、日本で医療にたずさわるというまっとうな道から外れたキャリアを選んだことになる。だからというわけではないが、そういったお説教には、同調できない。職業選択の自由はもちろんのことだが、医学教育で得た恩恵を社会に還元するのは、医者になるだけでなく、もっと他の方法もあっていいのではないかと考えるからである。
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