Sunday, March 19, 2006

Everybody has a beautiful name

 アングロサクソンの慣習なのか、ここではみんな、原則として下の名前で呼び合う。イングランド人の名前には、これまで経験したかぎり、そんなに珍しい名前はまずないから、いったん聞けばだいたい覚えられる。むしろ、名前のバリエーションが少ないので、かえって印象に残らず、PaulなのかJohnなのか、後から思い出せなくなって困ったりする。(余談であるが、私の同僚のリハビリテーション科のコンサルタント・マネージャー6人のうち、Tom、David、Michaelがそれぞれ2人ずついる。)同じイギリス人でも、ウェールズや北アイルランド出身の人は、聞き慣れない名前にあたることがある。

 しかしながら、ロンドンの職場では、同僚はイギリス人であるとは限らない。臨床現場にかぎって言えば、白人のイギリス人はマイノリティーである。となると、当然、名前もいろいろである。とくに、アフリカ人やアジア人(イギリス英語で"Asian"という場合、南アジア、つまり、インド・パキスタン・バングラディッシュを意味する。)の名前は、覚えやすいものから、いくら聞いても覚えられないものまで、いろいろである。

 私の名前は、下の名前が3音節、名字が4音節なので、欧米人はまず正確に発音できない。最初の難関は、下の名前の"o"の連続である。英語が母国語の人には、"Nasome"とか"Nazumy"と聞こえるらしい。つづいて、名字の"a"3つ。まず、一度では復唱できない。お互いに苦笑いするしかない。こちらはもう慣れてしまったので、名前をきちんと聞き取ってほしい時は、はじめにフルネームを名乗ってから、下の名前と名字に分けて、綴りをゆっくり言うことにしている。

 一時期、あまりに、みんなが私の名前を覚えるのに苦労するのを見ていて、英語式のミドル・ネームを作ろうかと思ったことがあった。それを聞いたスペイン人の同僚は、「そんなことをしちゃだめ。闘うんだ!自分もそうしている。」と半分真顔で言った。ちなみに彼の名前はGonzaloという。ロンドンの同じ職場で15年も仕事をしているというのに、いまだにGonzalezなどと言われると、半ばあきれ顔でこぼしていた。

 反対に、あまり気にしない人たちもいる。たとえば、前のボスのMikeや、そのボスのTomは2人ともギリシャ人で、名前はそれぞれMichaelisとCrysostomosというのだが、平気で自分からMikeとかTomとか名乗っている。インド系の、名字・名前とも長い場合は、名字のはじめの2−3音節をとって呼称にしている人が多いようである。中国系の人は、英語名風の名前が別にあるので、まったく困らないようである。

 名前だけでこんなに苦労しているので、チームの同僚であっても、当然、名字までは覚えきれない。何かの用事で名字を伝える必要が出てくると、あわてて名簿を引っ張りだす羽目になる。日本で、名字しか知らず、下の名前が必要になってあわてるのと逆なのである。

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