Saturday, February 03, 2007

24

 TVドラマ24のシーズン6が始まった。(以下、通常のテレビや新聞での予告以上のネタバレはありませんので、ご心配なく。)

 ご存じない方のために簡単に説明すると、24はtwenty-fourと読む。シーズン1はアメリカのFoxテレビで2001年に始まった。イギリスでは数ヶ月遅れてBBCで放映され、徐々に人気が高まった。シーズン3からは、SkyOneが放映している。

 主人公は、Kiefer Sutherlandが演じる、CTU(Counter Terrorist Unit–テロ対策のための架空の連邦機関)ロサンジェルス支局の捜査官ジャック・バウアー。アメリカの危機(要人の暗殺や、生物兵器や核兵器によるテロ)にまつわる出来事の始まりから24時間後に解決するまでを、1話で1時間ずつ同時進行方式に、24話かけて描いていく。ちなみに、Sutherlandは24の成功により、忘れ去られた「元俳優」から「スター俳優」に一気に復活した。

 私はシーズン1の途中から見始め、はまってしまった。シーズン1の最終話の日は、友人ら7人で集まり、鑑賞会をして盛り上がった。シーズン3とシーズン4はあまりいい出来ではなかったので、私の24熱もやや落ち着いたが、シーズン5がこれまでで最高の出来で、24中毒は一気に再燃した。

 そして、お待ちかねのシーズン6。まだ最初の3話しか見ていないが、滑り出しは上々である。

 毎週1話ずつなので24週間の長丁場になるが、最近のシリーズではいくつかのエピソードを連続して流すこともあるため、実際は24週よりも少し短い。アメリカで1月14日と15日に、2夜連続で2話ずつ放映し、16日に、最初の4話全部と第5話のさわりだけを含むDVDが発売される予定だった。しかし、あろうことか、1週間前に内容がリークし大騒ぎになった。

 1話の中でも何度も話が急展開し、先の予想がつかないジェット・コースター・ドラマ(古い?)という売りなので、内容のリークにはひじょうに気を遣っているらしい。関係者は内容を絶対に漏らさないという契約書にサインし、台本には通し番号がつき、誰がどの台本を持っているか、厳重に管理されているという。それでなぜリークかと思うのだが、ニュースに取りあげてもらうため、内部から意図的にリークしたという説も半ば冗談ながら、あるようである。

 さて、イギリスでは、アメリカから1週間遅れて21日から始まった。その翌日、クリエイターの1人のJoel Surnowの「恐怖を運んでいる(We're trafficking in fear)」と題するインタヴュー記事がガーディアン紙に載った。(これはMediaGuardianの記事なので、登録しないと全文は読めないかもしれません。登録は無料です。)

 今回のシリーズでは、世界の別の場所で現実に起こっているテロリズムがアメリカに上陸したという設定になっている。ホワイトハウスやCTUがこのテロとどのように闘っていくかというのが、今回のテーマである(と思う)。必然的に、アメリカが批判を受けている、racial profilingも取りあげられている。

 アメリカで最初の4話が放映された後、Fox以外のテレビ局は一斉に、シリーズ6がテロの脅威を煽っていると、批判的な論調で報道した。

 表面的に見れば、なんといっても放映しているのがFoxだから、テロの危機を必要以上に強調し、9.11後のホワイトハウスの方針に同調し、テロとの闘いの名の下の人権蹂躙の正当化をサポートしているととらえられないこともない。

 しかし、実際にドラマを見ていると、ホワイトハウスのスタッフには、racial profilingを正当化するグループと、それに反論する人間を登場させている。大統領は、その場その場でこの2つの間を揺れ動き、悩みに悩む。アメリカ合衆国大統領がテロリストと交渉するの?と思うような場面もある。なかなか複雑で、「タカ派寄り」とひとくくりにはとてもできない。

 Joel Surnowも、製作陣は右派から左派までさまざまな信条を持つ人たちの集まりで、特定の政治的グループを代表するものにはなりようがないと言っている。これまでのシリーズを見るかぎりそのとおりで、Foxにしては偏向せずによくやっていると私は、むしろ、感心している。一貫して流れているテーマは、アメリカ人が立場に関わらずに共有する「愛国心」や「ヒロイズム」だけで、それ以外は「是々非々」で対応しているように、私には見える。

 それになんといっても、これはTVドラマである。Surnow自身も、24が恐怖を利用していることは認めているが、同時に、「怖くなかったら、(24は)ここまで成功していない。それに、しょせんこれはTVドラマである。」と言っている。そんなことをいちいち突っ込んでいたら、ジェームス・ボンドやゴルゴ13はどうするのだろうか。

 外野の議論はさておき、シーズン6はこの先どう進んでいくのだろうか。上記のインタヴューによると、第4話が放映された時点で、19話の台本を執筆中だったが、結末がどうなるかまだわからないという。Sutherlandはすでにシーズン8まで契約をしているので、少なくとも、今回のシリーズと次のシリーズでは、ジャックは死なないことはわかっている。それでも、毎回緊張し、手に汗を握りながら見ることになりそうだ。

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