Monday, April 07, 2008

宣伝活動

 私が勤務する、South London & Maudsley NHS Foundation Trust(略してSLaM)が、広報用のショート・フィルム「Maudsley's Mission - The Future in Mind」をYouTubeにアップした。

 ひじょうにprofessionalに作られたフィルムで、研究と臨床をうまくリンクさせて、最先端の治療をおこなっている、素晴らしい病院に見える。

 政府が、患者に「選択」の自由を与える政策をとり、Foundation Trustとして、Trust独自で収入を得る道を探ることが可能なcorporate NHSにとっては、こういった広報も、大切な「企業」活動のひとつになっていくのであろう。

 SLaMでは、今後もこういったマルチ・メディアの広報をすすめていく方針だそうである。SLaMのフィルム・カタログはこちらからどうぞ。

Tuesday, April 01, 2008

エープリル・フール前日

 昨日の夜8時頃、1通のメールが届いた。

…we are pleased to inform you that we have accepted it for publication in Journal of xxx…

 そう、先日論文を再々投稿した学術雑誌の編集長から、論文を受理しましたというメールであった。

 やった!と喜んだが、すぐに「まだ4月1日になってないよね」と思ってしまったのは、この論文のここまでの道のりを振り返れば、無理もないことなのだ。側頭葉てんかん患者における記憶検査と脳画像検査に関する研究の論文なのだが、最初の原稿を書き始めてから足掛け5年、あちこちの雑誌に嫌われ続けてきた。不受理の返事を受け取るたび、この仕事は日の目を見ないのではないかと思うことがしばしばであった。それでもここまでしぶとく粘ってきたのではあるが。

 今回の雑誌も、すべり出しは最悪だった。投稿したのが昨年の4月下旬。途中、査読者の選定に手間取ったとかで、最初の査読結果が届いたのが5ヶ月後の9月。4年かかって初めて「不受理」と書いていない返事がきたと喜んだのも束の間、届いた査読者(2人)からのコメントを見て、言葉を失った。査読者1からのコメントが60点ある。(ちなみに、査読者2からは6点。)「こんなにコメント書いたら、これだけで総説が書けるでしょう」と突っ込みを入れながらも、頭をひねりにひねってコメントに応え、なんとか再投稿にこぎ着けた。ところが、さらにコメント付きで帰ってきて(査読者1からのコメントは合わせて64点になった)、追加の解析をやって再々投稿。

 もともと長い論文だったのが、コメントに添って改良を加えたらさらに長くなり、最終稿は引用文献が84にのぼる、59ページ(本文だけだと29ページ−原稿用紙ではありませんが)の大論文になってしまった。 改訂作業中、「こんな長い論文、誰が読むのだろうか」と共著者とぼやいたが、 64もコメントをくれた査読者は隅から隅まで読んでくれたのだから、最低1人はきちんと読んでくれたのはまちがいない。

 この「大」論文が5年がかりで受理にこぎ着けた一方で、去年の夏にあまり苦労もせずに書いた論文は、マイナーな訂正を加えただけで受理され、すでに雑誌のwebsite上で公開されている。論文のテーマも雑誌の種類もまったく異なるので、単純に比べられるものではないとはわかっているのだが。それでも、今年はこれで2つめの受理なので、ここまではなかなかいいペースできている。

 おっと、今日は4月1日なので、やたらなことは口にしないほうがいいのかもしれない。

Saturday, March 29, 2008

Gyrotonic® Apprentice Trainer

 最近、履歴書に新しい肩書きが増えた。「Gyrotonic Apprentice Trainer」という。ちなみに、Professional Qualificationsではなく、Personal Interestsの項目に入っている。

 Gyrotonicというワークアウトには以前から興味はあったのだが、ふと思いたって、家から一番近いスタジオに行ってみたのが去年の夏。あっという間にはまってしまい、以降、毎週2回、1時間のone-to-oneセッションに通いつめることになった。

 Gyrotonicというのは、Pulley Tower(滑車式のウェイトを使用したケーブルとストラップのついたタワー)とHandle Unit(コーヒー・ミルのような装置のついたベンチ)と呼ばれる器具を使ったエクササイズである。

私の先生のCherie (http://www.thethirdspace.com/bi/)

 一見、中世の拷問具に見えなくもない器具を使い、ダンス、水泳、器械体操、ヨガ、太極拳などの動きを取り入れた、立体的・回旋・らせん状の動きを行う。

 全身のストレッチ、ワークアウトとしてもすぐれものだが、それよりも、セッションが終わったときに、頭の中が空っぽになり、気分が軽やかになるところが気に入っている(勝手に、mental stretchingと呼んでいる。)

 セッションを重ねていくうちに、もっとGyrotonicについて知りたくなった。しかし、マニュアル本やDVDの類はいっさい門外不出。知識を深めるには、トレーナー養成コースに行くのが(ほぼ) 唯一の方法である。トレーナーになる気はないのだが、それしか方法がなければ仕方あるまい。

 というわけで、まずは1月にロンドンで、6日間の準備コースを受けた後、2月に東京で、12日間の養成コースを受けた 。このコース、途中に1日休みがあるだけで、連日5-6時間のトレーニング。こんな運動漬けの生活なんて、大学の部活の合宿以来、20年ぶりであった。半分くらいの年齢の人たちに混じってのトレーニングは厳しいものがあったが、ぎしぎしと叫びをあげる体をだましだまし、なんとかコースを無事に修了し、Apprentice Trainer(見習いトレーナー)のお免状をもらった。

 ひとつ達成すると、欲が出るものである。ロンドンに戻り、筋肉痛から開放されたら、せっかくここまでやったのだからトレーナーの資格をとろうと、急に気が変わった。

 Certified Trainer(認定トレーナー)になるためには、1年以内に60レッスンをこなし、さらにもう2つのコースに行く必要がある。

 本当に最後までたどり着けるかどうかは心もとないが、見習いトレーナーとして、週末に細々とレッスンを始めたところである。

Monday, February 18, 2008

2.18

我々は福島大野病院事件で逮捕された産婦人科医の無罪を信じ支援します。

 昨年に続き今年も、Yoshan先生が「新小児科医のつぶやき」で2.18企画を立てられている。ちなみに、昨年の2月18日に際しては、私はこんなことを書いていた。読み返してみると、隔世の感がある。

 「福島大野病院事件」の裁判の記録は、毎月の公判の傍聴記がネット上にアップされるごとに、目を通している。証人たちの陳述やマスコミの報道を読むと、時に、検察側と弁護側との間の溝の深さに愕然とし、やりきれない思いを感じることがある。それと同時に、 日本を離れ、海外で医療に携わる身としては、誠実な医療行為の結果をもとに刑事告訴されることはありえない環境の中で仕事ができることのありがたさを、再認識することもある。

Tuesday, January 01, 2008

新年のごあいさつ

 まったくお正月気分を感じないまま、2008年が始まってしまいました。

 2007年は、私にとって、しんどいながらも我慢して、ようやく次へのステップのための光が見えかかってきたという年でした。

 コンサルタントとして2年目を迎え、日々のルーティンに埋没せずに、チャレンジを続けなければ と気負っていたのですが、1年が過ぎてみたら、チャレンジのほうが寄ってきてくれて、心配は杞憂でした。メインの仕事のPAMSというチームは2年目に入り、マネージメントサイドとの蜜月時代は終わり、厳しい数的目標をクリアすることが求められるようになりました。いかにサービスの質を下げずにマネージャーたちの要求に応えるか、チーム・リーダーとともに頭を絞る毎日でした。また、12月からは、Assertive Outreach Serviceというチームに週1日関わっています。サービスの対象となる患者さんがPAMSとは異なるため、仕事のスタイルを変えなくてはいけなくなりました。

 NHSの財政難は悪化するいっぽうで、私の所属するNHSトラストでも「サービス再編計画」が着々と進行中です。計画は猫の目のようにくるくると変わり、いろいろな噂が飛び交う中で仕事をするのは、精神的に落ち着かないものでした。しかしいっぽうで、こういった厳しい状況の中でも、 優先順位をつけて、意味のある新しいモデルを作るべく知恵を絞る同僚たちの中に、これまでに新しいものを生み出してきたイギリスの伝統を見る思いがしました。もっともこれは裏返すと、作っても改良せずにすぐに捨ててしまうという悪い伝統でもあるので、 もったいないとも思いましたが。

 メインの仕事が落ち着かない中で、サブの仕事として、ロンドン在住の日本人を対象にした外来と、てんかんの精神科的問題を主に診る外来を始めました。私がずっと興味を持ち続けてきた、あるいは私だからこそできるテーマの外来を持つことができたのは、仕事への意欲を高めてくれるだけでなく、仕事の内容のバランスを保つ上でも、本当によかったと思います。始めたばかりで大変なことも多いですが、今年はこれらを軌道に乗せていきたいと思っています。

 もちろん、仕事ばかりしていたわけではありません。イギリスに来てしばらくは、サルサに凝り、よく踊りに行っていたのですが、 ここ数年、踊ることへの情熱はすっかり冷めていました。昨年秋に、Tango fireというパフォーマンスを見て、タンゴに魅せられて、タンゴのレッスンを始めました。 ダイナミックで自由なサルサに比べると、タンゴの動きはひじょうに 繊細かつ厳格で 、初めの頃はただ前に進むのにも苦労するというありさまでした。初心者向けのコースが終わり、ようやくフォローのしかたが少しわかるようになったところです。今年はミロンガにデビューするのが目標です。

 ロンドンに来てから、もうすぐ丸8年になります。日本に一時帰国するたびに、浦島太郎のような気分になります。臨床の仕事を始めてからは特に、英語が少し上達し、英語的な論理で動くことが増えたせいか、自分自身の一部が少しずつ「英国人化」していくように感じ、複雑な思いがすることがあります。けれど、ここに住んで仕事をしていく以上、これは止められないことなので、多民族・多文化都市ロンドンで、World citizenとしての生き方を模索していこうと開き直っています。

 みなさまにとって、かけがえのない、素晴らしい年になりますよう、心からお祈りします。

 2008年元旦