オン・コールその2−9時・5時の医者
オン・コールその1の続きである。
日勤・夜勤帯とも、SHO、SpR、コンサルタントがそれぞれ1人ずつ、オン・コールとして名を連ねている。呼び出しの順序としては、まずSHOが呼ばれ、SHOの手に余る場合、SpRが呼ばれ、さらに必要であればコンサルタントに連絡がいく。
日勤帯の場合は、基本的にどの病棟やチームにも必ず医師(休暇中の場合は代理)がいるため、Duty SHOがSHOの代理や雑務をする以外、SpRやコンサルタントのオン・コールが呼ばれることはほとんどない。
夜勤帯と週末は、オン・コールの医師が担当するのは、主に2つの病院(St Thomas’病院とLambeth病院)の病棟での仕事である。St Thomas’病院の救急外来にはリエゾン精神科看護師室(Psychiatry Liaison Nurse -PLN- Office)があり、看護師が24時間常駐している。地域精神保健チームの患者や家族からの問い合わせ等や、救急外来で精神科の関与が必要とされる患者は、まず看護師が対応する。
それ以外のすべての業務(2つの病院の精神科病棟とSt Thomas'病院の一般科のリエゾン)は、SHOが最初の窓口になる。たとえば、緊急入院があったり、予定入院でも、患者が病棟に到着するのが17時以降になれば、入院受けも指示出しも、Duty SHOの仕事である。地域精神保健チームや救急外来のケースでも、PLN Officeの看護師の判断によっては、SHOにまわされることがある。
多くはないが、夜間・週末に強制入院の有無を判断するための診察(Mental Health Act Assessment)が必要になる場合がある。SHOはSection 12(2) approval(日本の精神保健指定医のような資格。これがないと、強制入院等の診察ができない。)を持っていないため、必然的に、SpRが呼び出されることになる。
SHOもSpRも研修医なので、必要に応じて上級医の助言・指導を得る権利があり、また、指導を求めたり報告する義務がある。
臨床行為に関するオン・コールとは別に、管理業務のオン・コールもある。医師に関する管理業務はすべてコンサルタントの責任で、SpRやSHOが関わることはない。
幸いなことに、コンサルタントの管理業務には、ベッドの管理は含まれない。たとえば、夜中に一般の救急外来に来た患者が精神科病棟に緊急入院の必要があると判断されたとしても、ベッドを探すのはコンサルタントの仕事ではない。ベッド・マネジメント・チームのオン・コール担当者の仕事である。
このオン・コール体制、仕事を始めた頃はひじょうに戸惑った。5時になったら、仕事が残っていてもDuty SHOに引き継いで帰るなんて、日本で仕事をしていた頃は考えられなかった。
去年の春、リエゾン精神科で仕事を始めてまもなくの頃、ロンドンに仕事のために滞在中に精神病状態になった外国人の患者を担当した。指示出しや記録、外国の家族との連絡等に手間取り、7時過ぎまでかかってようやく全部仕事が終わった。やれやれと帰る途中、病院の出口で、肝心の患者さんが、セキュリティ2人に左右を挟まれて、外から病棟に誘導されるところに出くわした。離院しようとしたらしい。指示の出し直しかと思い、とぼとぼとPLN Officeに行ったら、宿直のSHOと看護師さん両方に、あとは任せてさっさと帰りなさい、と追い出されてしまった。
すっかりこちらのシステムに慣れた今となっては、これも思い出話である。
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