地域・専門科間の格差
DoHが「good news」と言っている研修ポストの充足率だが、地域、専門科ごとの充足率をみると、ばらつきがあることがわかる。
たとえば地域。Yorkshireは94%充足しているが、Trentは64%(!)しか充足していない。8月1日のD-Dayには、Trentでは約3分の1のポストに医者がいないことになる。一時的なサービス縮小は避けられないのではないだろうか。(患者さんたちにとってはいい迷惑だし、オン・コールのコンサルタントたちも、気の毒なことである。)
専門科については、GPの充足率98%から麻酔科の75%まで、大きなばらつきがある。精神科は、平均すると82%充足しているが、STのレベルごとのばらつきがひじょうに大きい。(speciality/sub-specialityごとの充足率はこちら。)
精神科ST4の充足率は平均で96%だが、sub-specialityによって大きな差がある。General Adult、Older Adult、Child & Adolescentは100%埋まっているいっぽうで、Forensicは79%、Psychotherapyが78%、Learning Disabilityにいたっては59%である。
ST2の充足率は93%、ST3は89%と、まあまあである。しかし、ST1になると、72%と、がくっと下がる。ST1というのは、初期研修を終えた研修医が専門医研修を始める学年である。FT2(初期研修の2年目)を終え、専門科を選ぶ研修医たちにとって、精神科は不人気なのである。clinical tutorをしている同僚の話では、各Deaneryはリクルートに苦労しているらしい。
これは、まったく驚くことではない。精神科は常に不人気科目のひとつであった。だからこそ、精神科はずっと、外国人医師に頼ってきた。外国人医師がイギリスに研修のために来た場合、精神科以外の科の研修をすでに始めていたとしても、精神科に専門を変更する人が少なくなかった。研修ポストにつける確率が、UK出身者に人気の科に比べ、圧倒的に高いからである。精神科にジア系・アフリカ系の研修医が多いのは、そのためである。
あくまで推測であるが、ST2-3の充足率がST1よりもずっと高いのは、UK/EEAの卒業生に加えて、すでに研修を開始していたアジア系・アフリカ系の研修医が多くいるためだと思われる。ST1に応募した中に外国人医師の割合は少ないはずなので、不人気の影響をもろにかぶっているわけである。
これまでは、UK卒業者の数が研修ポストの数を圧倒的に下回っていたため、UK卒業者は、希望する地域で、希望する科の研修を受けることができた。しかし、UK卒業者の増加、政府による研修ポストの削減、非EEA出身者の閉め出しにより、UK卒業者(といくらかの外国人医師)により、全部の研修ポストを埋める必要が出てきた。
UK卒業者でまだポストを得ていない研修医たちは、UKに残って研修を続けたい場合、希望する科を変更しなければポストをとれない人が出てくる。ご親切なことに、ラウンド2の告知のページには、麻酔科、産婦人科、小児科、精神科、老年医学科の5つが、ポストにたくさん空きがある科として、特別に名指しされている。(見覚えのある科が並んでいますが。)
政府は、これまでのような、足りなければ外国人医師で埋めればよいという逃げ道をみずから塞いでしまっている。不人気科のポストがラウンド2でも埋まらなかった場合、いったいどうするつもりだろうか。
希望しない科に変更してまで医師としての仕事を続けるのか、外国に逃げて希望の科の研修を続けるのか、それとも、さっさと見切りをつけてキャリアを変更するのか。研修医たちがどういう選択をするのか、見守っていきたい。
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