Sunday, October 29, 2006

冬時間

 今日の朝、時計が変わった。正確に言えば、冬時間になったのではなくて夏時間が終わっただけなのであるが、気分としては「冬」時間が来たのである。

 10月最後の日曜日の午前1時に、1時間時計が後戻りし、英国夏時間(British Summer Time、BST)からグリニッジ標準時(Greenwich Mean Time、GMT)に戻る。3月最後の日曜日に夏時間に変わるまではGMTとなり、日本との時差は9時間になる。

 時計が1時間後ろに進むので、この日曜は1時間得をする。日曜日のおまけの1時間、大事に使いたいといつも思うのだが、実際には毎年なかなかうまくいかない。この時期は急に寒くなるので、たいてい風邪をひいている。今年もそうで、先週の半ばに始まった風邪がひどくなり、昨日(土曜日)は熱っぽくて体がだるくて動けず、丸1日ベッドにもぐり、日本から持ってきた荒井由実と沢田研二と中森明菜のベストを聴いて、「20世紀少年」(コミックです)を読んで、ひたすら70年・80年代の気分に浸って過ごした。(わからない方、すみません。20世紀少年には、70年・80年代の社会・風俗がたくさん出てくるのです。)10巻でやめておくはずが止まらず、手持ちの19巻まで一気に読み終わったら朝の4時近かった。そのため、今日のおまけの1時間は、睡眠時間の補充となった。

 8月最後の月曜日のバンク・ホリデー(国民の休日)が終わると、ロンドンの気温は日に日に低くなり、日照時間も1日ごとに短くなるのがわかる。最近では、5時過ぎに職場から出るとかなり薄暗くなっていた。じきに、職場から出ると外は真っ暗になっていることだろう。

 ロンドンの冬が始まる。

Thursday, October 26, 2006

サイクリスト

 月曜日から、自転車で通勤している。

 先週金曜日、JCEG(Joint Commissioning Executive Group)でのトークがうまくいってほっとし、突然思い立った。自転車買おう!

 もちろん、思い立つまでに多少の伏線もあった。いくら私でも、唐突にゼロから思いついたわけではない。

 ロンドン市長のKen Livingstoneが混雑税を導入して以来、サイクリストの数が増えている。ロンドン市自体も、サイクリストを増やして「環境に優しい都市」にするべく、徐々にではあるが、自転車専用レーンを増やしている。

 SLaMでも自転車通勤を奨励している。先日は、ランベス病院でCyclist's Breakfastというイベントがあり、自転車で来た人には、病院の食堂で朝食を無料で提供していた。

 悪名高いロンドンの公共交通機関には、これまでさんざん悩まされてきた。2年前、職場がもう少し家から近かった時には、ローラーブレードで通勤しようかと、真剣に考えた。試走してみたら、家から職場までほとんどが観光地のためものすごく混雑していて、スケートでその間を縫って走るのは危険だということがわかり、残念ながら断念した。

 コンサルタントの同僚にもチームの同僚にも、自転車で通勤している人が何人かいて、自転車もいいなと前々から思っていた。また、自宅からオフィスのあるチーム・ベースに行くのはバスで一本なのだが、もうひとつのオフィスがあるランベス病院や、SLaM内外の他の施設に行くことも多く、交通の便が悪いので、困っていた。

 自宅の外に駐輪スペースがないため、折りたたみ自転車が唯一の選択肢である。思い立ったら止まらない。週末に自転車屋さんを4件まわり、ようやく、Bromptonの折りたたみ自転車を手に入れた。一番丈夫なロックはもちろんのこと、ヘルメット、反射テープがついたジャケット、手袋、防水ズボン、反射テープ付きの裾用ストッパーと、上から下まで一式そろえた。

 そして月曜日。Transport for LondonのJourney Plannerからダウンロードしたサイクリング・マップを頼りに、初乗りをした。自転車で比較的長い距離を走るのは、学生の時以来である。自転車の乗り方は忘れないっていうからいいよね、と、初乗りでそのまま出勤してしまうところが、無謀と言えば無謀である。

 サイクリングマップは、サイクリストに優しいルートを選んでいるようで、大通りをできるだけ避けて住宅地の中を通っている。何度も止まって地図を確認しながら、ようやく職場に着いた。緊張したのと、達成感のせいか、あまり疲れは感じなかった。

 イギリスでは、自転車は「車」なので、歩道を走るのは法律違反であり、車や二輪車と一緒に車道を走ることになる。日本と同じに車は左側通行で、自転車は車道の左端を走る。信号ではたいていの場合、交差点と車の停止線の間に自転車専用レーンが車道全幅にわたって設けられており、信号で止まったときは自転車は車の前に出て待つことができる。この自転車専用レーンに車が止まることは法律違反になる。

 問題はラウンドアバウトである。ラウンドアバウトというのは、何本もの道路が交差する真ん中に大きなサークルがあり、このサークルにまず合流し、そこから目的の道路に抜けていく交差点である。信号はなく、ラウンドアバウトに沿って走っている車が優先で、ラウンドアバウトに入る車は、ラウンドアバウト上の車が切れるのを待って合流する。慣れれば問題ないと聞くが、出たり入ったりするタイミングを計るのがなかなか難しい。ましてや、車と一緒である。かなり怖い。(私の友人は、イギリスでレンタカーで旅行したとき、ラウンドアバウトから抜けられず、何度もぐるぐる回る羽目になったそうである。)

 大きな交差点の右折も、ひじょうに怖い。たくさんレーンがあって、右折、直進、左折とわかれているときは、交差点のかなり手前で、走る車の間を縫って右折のレーンまで入っていかなければならない。また、曲がるときも、あまり左側に寄りすぎると、側溝の溝やふたに引っかかるため、道路の中央寄りを走る。そうすると、すぐわきや後ろに車が迫ってくる中を大きく右に曲がるので、これまた、怖い。

 行きはよいよい帰りはこわい、ということで、初日の帰りは、なんと土砂降りの雨であった。防水ズボンをはき、自転車に乗った。ビギナーズ・ラックなのであろう。あまり苦労もせず、疲労も感じず、無事に帰り着いた。もっとも、ラウンドアバウトも右折もうまくこなせず、歩行者と一緒に歩行者用の信号をひとつひとつ渡ってごまかした。

 火曜日は、夜出かける予定があり自転車はパスしたので、水曜日が自転車通勤2日目であった。行きはたいした問題もなく、無事に職場に着いた。ところが帰り道、また土砂降りの雨に見舞われた。おまけに、途中で1ブロック手前で曲がってしまい、迷子になった。折悪しく、雨足が一番強い時に道がわからなくなり、さすがに途方に暮れた。とはいえ、まったく土地勘がない場所ではなかったので、なんとか本来のルートにたどり着いて、へろへろになって家に帰り着いた。

 汗をかく上に、2回もずぶぬれになると、風邪もひく。その夜から、なんとなく喉が痛く、だるい。10月下旬というのは、ロンドンで自転車通勤を始めるのに適した時期とはいいがたい。

 それでも、自転車は買ってしまったし、自転車通勤するって宣言したし。しかたなく、今日も自転車で出かけていった。走っているときは、超極太ロックを体に斜めに掛けている。これが、ずしりと重い。

 それでも3日目にして初めて、行きも帰りも雨が降らなかった。また、これも3日目にして初めて、全経路を、「歩行者」にならずに走りきった。

 果たしてこの自転車通勤、いつまで続くだろうか。

Monday, October 23, 2006

ご無沙汰

 なんと、9月・10月と、ブログをすっかりほったらかしにしてしまった。当たり前すぎるいいわけだが、忙しかったのである。仕事も忙しかったし、夏休みで日本に帰っていたし。

 まず、PAMS(Placement Assessment and Management Service)の「出資者」にあたるいくつかの組織のお偉いさんたちからなる、JCEG(Joint Commissioning Executive Group)の10月の月例会で、PAMSの発足から9ヶ月間の成果について、話をした。必要なデータを集めて解析するために、データベースをプログラムしたり、チームのメンバーたちに発破をかけたり追いかけ回したりした。

 9月半ばには、King's Fundという独立シンクタンクが主宰する「Management and Leadership for Clinicians」という、5日間のマネジメントのコースに行ってきた。ロンドン中心部のKing's Fundの本部でのコースだったため自宅から通えて楽だったが、連日朝9時から夕方5時半まで、普段の仕事とまったく毛色の違うマネジメントに関する講義やらディスカッション形式の実習やらが盛りだくさんで、とにかく疲れた。

 3日間の短い休暇をとって、南西フランスのスペイン国境沿いにあるバイヨンヌにも行ってきた。こんな忙しい時期に休暇をとらなくてもいいようなものだが、なにせ、年間32日(プラス持ち越した5日)の休暇があり、カバーしてもらう同僚のスケジュールとの兼ね合いもあって、この時期に休むことになった。

 2週間半ほど、日本にも帰ってきた。夏休みだったのだが、前半には学会のために金沢に行ってきた。私はある学会の認定医なので、学会に出席しないと、認定医の更新ができないのである。

 日本から戻って早々、製薬会社がサポートしているマスタークラスという、2日間の講習会にも行ってきた。初めてマンチェスターに行った。

 スケジュールを立てるのが下手なのか、たまたま重なってしまったのか、たぶん両方の理由で、9月と10月は、忙しい、忙しいと思っているうちに、あっという間に過ぎてしまった。

 大変だったのだけれど、新しいことずくめで、楽しかった。

 最大イベントのJCEGでのトークが先週無事に終わったので、少し気分が楽になった。これから追々、この2ヶ月の面白かったことについて、書いていこうと思っている。